研究実績の概要 |
異質な環境下の局所個体群が個体の移動によって結合したメタ個体群における形質の進化を、侵入適応度R0を用いたadaptive dynamicsと量的集団遺伝学の理論とを結合したOligomorphic dynamics (Sasaki and Dieckmann, J. Math. Biol. 2012)で解析することにより、以下の研究成果を得た。 1)構造をもつ個体群における異質な環境への適応や形質分岐、急速な進化を統一的に解析した (Lion, Boots and Sasaki, American Naturalist, 2022; Lion, Sasaki and Boots, Ecology Letters 2023)。2) 病原体の宿主免疫系からの逃避を抗原空間上の進行波として捉え、免疫逃避の進化速度と免疫不全宿主の割合との関係を明らかにした(Kumata and Sasaki, Proc R Soc B, 2022)。3) 宿主免疫からの逃避を繰り返す病原体が強毒化する一般的傾向を持つことを示した (Sasaki, Lion, Boots, Nature Ecol Evol, 2022)。4)メタ個体群における移動分散や生産力の不均一性が、病原体の毒性を必ず上昇させるという一般的な法則性を見出した(Sato, Dieckmann, Sasaki, submitted)。5) ニッチ空間の中心から辺境に至る環境勾配(生産力の異質性)の存在のもとで適応進化する分類群の進化動態の解析により、ある分類群のニッチ空間の中心域での種分化のホットスポットが出現することや、ニッチ空間辺境において「生きた化石」種が必然的に出現することなどを、「適応前線方程式」の理論で解明した(Ito and Sasaki, American Naturalist, 2023)。
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