研究課題/領域番号 |
19K22452
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
一柳 健司 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70401560)
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研究分担者 |
今村 公紀 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80567743)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 進化 / 霊長類 / iPS細胞 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
ヒトとチンパンジーのiPS細胞(メス、各2系統)を用いて、mRNA-seq解析およびH3K4me3、H3K27me3、H3K27acのChIP-seq解析を行い、種間比較した。種間のゲノム配列やゲノムアノテーションの違いをなくすため、どのシーケンスについても両種のゲノム配列にマッピングされるものだけを用い、ヒトゲノムのアノテーションにしたがって、遺伝子の解析を行った。mRNA-seqでは両種間で遺伝子発現量の違いはほとんどなく、発現量差がある遺伝子についても、特に際立った機能集団(未分化性維持、神経分化など)に偏っているわけではなかった。H3K4me3のピークも非常によく似ていたが、一方、H3K27me3のピークの中にはヒト特異的なものがあり、神経分化制御に関わる遺伝子の近くに多かった。これらの遺伝子はiPS細胞ではどちらも発現していないが、神経分化の際に発現タイミングや量に差が現れる可能性が示唆される。 総じて、ヒトとチンパンジーのiPS細胞は形態のみならず、遺伝子発現パターンやエピゲノムが似ており、細胞分化過程における種間の違いとそのメカニズムを研究するにあたって、良い出発材料であることが確認できた。 一方、分化実験に関しては、チンパンジーのiPS細胞をneurosphereに分化させるプロトコールを確立できた。 これらの研究成果について、論文一報を発表し(Kitajima et al. Stem Cell Res 2020)、一報が投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた通り、iPS細胞のエピゲノム比較、iPS細胞からの分化プロトコールの確立ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はneurosphereへの分化に加え、neural crestへの分化も試みる。iPS細胞のエピゲノム比較では神経分化における遺伝子の近くにエピゲノムの違いがあったので、これらの分化過程について、トランスクリプトームとエピゲノムのタイムコース解析を行う。また、骨格筋細胞への分化プロトコールを確立し、同じくトランスクリプトームとエピゲノムの比較をタイムコースを取りながら行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞を筋肉に分化させる実験を本年度に行わなかったため、誘導培地などの費用が発生しなかった。本年度に実験を行う予定であり、それに使用する。
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