研究課題/領域番号 |
19K22464
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大城 朝一 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40311568)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | infra-slow oscillaiton / ヒスタミン / 血管運動 / optogenetics / chemogenetics |
研究実績の概要 |
これまでの薬理学的スクリーニングから、ヒスタミン及びヒスタミン受容体Hrh1に作用するアンタゴニスト(Ketotifen, Hydroxyzine 及び Mepyramine)を脳に直接投与すると脳波に含まれる超低周波成分(infra-slow oscillation)が消失する事がわかっていた。この観察を手掛かりにしてHrh1を欠損するノックアウトマウスにおけるinfra-slow oscillationを調べた。予想外にもinfra-slow oscillationに異常は観察されなかった。しかしながら、このHrh1ノックアウトマウスは脳に直接投与したヒスタミンにまだ弱く応答し、さらにアンタゴニストの投与によってinfra-slow oscillationが完全に消失した。この観察はつまり、Hrh1以外にまだ同定されていないヒスタミン、Hrh1アンタゴニスト受容体が脳内に存在し、それがinfra-slow oscillationリズムの生成に重要な役割を果たしていることを示唆する。 Infra-slow oscillationの介入操作が可能であるかどうかを見るために、光感受性チャネル遺伝子及び改変アセチルコリン受容体が視床下部ヒスタミン神経核に発現している組み換えマウスを作成した。光感受性チャネル遺伝子を発現させたマウスを光刺激するとinfra-slow oscillationのリズムに干渉することが出来た。改変アセチルコリン受容体を発現させたマウスに薬剤を与えtuberomammillary nucleusの神経活動を強制的に停止させると、それに伴いinfra-slow oscillationが消失する事も明らかとなった。これらの観察はヒスタミンがinfra-slow oscillationのリズム形成に重要な役割を果たすことを改めて強く示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの生理学的実験、薬理学的研究からinfra-slow oscillationは脳動脈の自発的血管運動が原因であり、そこにヒスタミンが重要な役割を果たすことを明らかにしている。遺伝学的な解析によって、既存の3つのヒスタミン受容体Hrh1, Hrh2, Hrh3の関与は小さいことを明らかにした。しかしながらHrh1変異マウスのinfra-slow oscillationはHrh1に対するアンタゴニストによってまだ影響を受けることを新たに見出し、infra-slow oscillationリズムの形成には既存のHrh1を介さないが、ヒスタミン、ヒスタミンアンタゴニストが作用する未同定の受容体が関わることを示唆する知見を得た。 視床下部ヒスタミン神経核(Tuberomammmilary Nuclei)に光感受性チャネル遺伝子(Channelrhodopsin, Halorhodopsin)や改変アセチルコリン受容体(hM4Di)を発現する組み換えマウスを作成し、ヒスタミン神経細胞の活動を制御することでinfra-slow oscillationリズムを外部から介入操作することが可能であることを明らかにした。 ヒスタミン以外にも血管に作用する生理活性物質としてGABAが知られている。GABAの役割を調べるためにGABA合成酵素(Gad65, Gad67)を欠損するノックアウトラットの解析を行った。これらのラットは大きな癲癇発作またはヒトの統合失調症に類似した神経学的な症状を呈する事が明らかとなった。しかしながらinfra-slow oscillationにおけるリズムに異常は見られなかった。脳内でのpH変化を簡便に検出できる新たなpH電極の発表を行った。この電極を使って脳内のpH変動がinfra-slow oscillationと同期していないか現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒスタミンは古典的なヒスタミン受容体(Hrh1, Hrh2, Hrh3)以外にも、GABAA受容体ベータ3サブタイプに結合し作用する事が知られている。免疫蛍光染色法によりGABAA受容体ベータ3タンパク質は脳血管の平滑筋で発現している事を確認しており、Hrh1に代わるinfra-slow oscillation に関わるヒスタミン受容体の候補として現在注目して解析を行っている。GABAA受容体ベータ3遺伝子のCre-loxP システムにより条件付ノックアウトが可能な組み換えマウスを既に入手し、現在、脳血管の平滑筋で部位特異的ノックアウト個体を作成し解析中である。 薬理的スクリーニングで見つかったアンタゴニスト(Ketotifen, Hydroxyzine 及び Mepyramine)はヒスタミン受容体だけでなく、弱いながらもアセチルコリン受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体等にも作用する事が知られている。これらの受容体の関与に関しても薬理学的、遺伝学的な解析を進めていく。 Infra-slow oscillationの基盤にある血管運動に伴い、血管平滑筋からカルシウムや水素イオンの出入りがあるものと予想される。脳内のpHを簡便に測定する電極を開発したので、それを利用してinfra-slow oscillationと同期したpH信号の揺らぎを検出する手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に購入予定であったトランスジェニックマウス類のはまだ入手できていない。残りのトランスジェニックマウス(4系統:280万円)は次年度中に購入する。
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