研究課題/領域番号 |
19K22468
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
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研究分担者 |
三枝 理博 金沢大学, 医学系, 教授 (20296552)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 視床網様核 / 統合失調症 |
研究実績の概要 |
感覚情報は大脳皮質へと送られるが、そのまま伝達されるのではなく、その中継地点である視床において選別されている。この情報の選別において重要な役割を担っているのが、大脳皮質と視床の間に位置する視床網様核である。本研究は、視床網様核の機能を明らかにするために、(1)遺伝子操作マウスの作成、(2)電気生理実験、(3)神経生理検査、(4)行動実験を計画した。それぞれの進行状況は以下の通りである。 (1)遺伝子操作マウスの作成:視床網様核ニューロンの機能の低下したマウスを作成する第一段階として、バゾプレシン産生ニューロン特異的に組み換え酵素Creを発現させた遺伝子マウス(AVP-Creマウス)とCre存在下で赤色蛍光タンパク質(tdTomato)を発現するマウス(tdTomatoレポーターマウス)を交配し、視床網様核ニューロンを赤色蛍光タンパク質で特異的にラベルできることを確認した。次に、GABA作動性シナプス伝達に必要な小胞型GABAトランスポーター(VGAT)のfloxマウスと交配し、視床網様核で特異的にVGATを欠損するマウス(AVP-VGAT-/-マウス)を作成し、そのマウスの脳切片でin situ hybridization法を行い、視床網様核でVgat mRNAの発現が消失していることを確認した。 (2)電気生理実験:AVP-VGAT-/-マウスにおいて視床網様核から視床への抑制性入力が抑制されていることを確かめるために、まずは野生マウスを用いて、マウスの日齢、脳切片を作成する条件、切る角度、シナプス後電流の測定方法、の最適化を図るために、条件をいろいろ変えて検討中である。 (3)神経生理検査:視床網様核の機能異常と統合失調症の関係を調べる目的で、統合失調症のエンドフェノタイプであるPPIや脳波の実験を開始した。 (4)行動実験:実験は開始していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子操作マウスの作成については、計画以上に順調に進展しているが、電気生理実験の方はやや遅れており、全体としては「おおむね順調に進展している」と評価する。電気生理実験が遅れてしまった理由は、これまでの培養細胞を用いた実験セットを脳スライスを用いた実験セットに変更するのに時間がかかってしまったことである。顕微鏡に関しては、倒立顕微鏡から正立顕微鏡に変える必要があり、マニピュレータをのせるプラットフォームも必要となった。また、スライスを入れるチェンバーは特注品であり納期に2か月以上かかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脳スライスを用いた電気生理実験を精力的に行う。まずは野生マウスを用いて、視床網様核ニューロンと視床ニューロンの間のシナプス結合について詳細に調べる。次に、視床網様核ニューロンを生きたまま蛍光タンパク質でラベルしたマウスを用い、野生マウスで得られた結果を確かめる。その後、視床網様核でVGAT発現が消失していることが確かめられたAVP-VGAT-/-マウスを用い、視床網様核ニューロンと視床ニューロンの間のシナプス結合がどのように変化しているのかを明らかにする。もし、視床網様核ニューロンから視床ニューロンへの抑制性シナプス伝達が低下していなかった場合は、新しい遺伝子操作を導入し、視床網様核ニューロンの機能が抑制されているマウスができるまで、電気生理実験をくりかえす。 神経生理検査および行動実験は、視床網様核ニューロンの機能が抑制されていることが電気生理学実験で確かめられたのちに初めて本格的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、電気生理実験が遅れたことで、遺伝子改変マウスの必要数が当初予定よりも少なかったためである。今後は、当該年度以降分として請求する助成金と合わせて、実験の必要数に合わせたダブルトランスジェニックマウス、トリプルトランスジェニックマウスの作成、電気生理実験、動物行動実験、神経生理検査に必要となる消耗品の購入および学会参加旅費として使用する予定である。
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