研究課題
本研究は、まだその機能的意義や正確な脳内分布が不明である小棘構造 (spinule)や多胞体 (multivesicular body; MVB)の観察に最適化した電子顕微鏡解析法を構築し、特にspinuleを中心に海馬CA1領域と小脳皮質における種類と分布と出現頻度を明らかにする。また、神経活動やシナプス可塑性と出現頻度や位置の関係について、遺伝子改変動物を用いた行動薬理学的手法と組み合わせて明らかにすることで、神経機能との関連性と制御に関わる遺伝子についての情報を取得する。本課題の実施により、正確な解析が不可能であった微小膜構造の解析基盤が構築でき、微小膜構造の制御機構や神経機能における役割を明らかにする端緒となる。さらに、現象自体の有無や意義が良く分かっていない「細胞質移行による細胞間情報伝達現象」の研究領域基礎を構築できる可能性が有る。そこで、令和元年度は、実験計画(1)~(5)のうち、(1)SpinuleとMVBの種類と形態的特徴、出現部位と頻度の解析と (3)SpinuleとMVBの周辺構造と内部構造の詳細解析について実施し、spinuleとMVBの形態的特徴と出現頻度を明らかにした。そこで、本年度は(2)神経活動変化やシナプス可塑性とspinuleの分布(出現頻度)変化の解析、(4)Spinuleの形成と維持へのarcの関与の検証、(5)経シナプスウイルス伝播現象へのspinuleの関与について、実験を進め、特に(2)で、運動学習に伴いspinuleの出現頻度が上昇する時間帯があること、またグリア細胞のMVB様構造も増加することを示唆する結果が得られた。
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eNeuro
巻: 0248-20 ページ: -
10.1523/ENEURO.0248-20.2020