研究課題/領域番号 |
19K22475
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
尾仲 達史 自治医科大学, 医学部, 教授 (90177254)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 愛着様行動 / 条件付け場所嗜好性試験 / 超音波発声 / 接触刺激 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、超音波発声から情動状態を推測できるラットを用い、羨望・嫉妬様発声行動の実験モデルを構築し、その神経機構の解明に繋げることである。 ラットの発達期に繰り返し接触刺激を加えることでラットは実験者に対して親和的な行動を示す。このラットの目の前で実験者が他個体に快の接触刺激を加えると不快情動の指標となる22 kHzの超音波発声を出した。自身が快の刺激を加えられていない状況だけでは不快の超音波発声を発声しない。しかし、実験者が目の前で他個体に対し快の接触刺激を加えると不快の超音波発声を示す。したがって、ラットは快刺激が他個体と比べて不平等であると認識した時に不快情動の指標の超音波発声をすると考えられる。そこで、この不快情動が実験者の親和性に依存するのかどうかを検討した。まず、ラットは目の前の実験者を慣れた実験者かどうか区別できるかを検討した。ラットは、初めて会った実験者ではなく、発達期に快の接触刺激を加えた慣れた実験者を選択して接近した。従って、ラットは慣れた実験者と初めて会う実験者とを区別することができることが分かった。ラットは目の前で慣れた実験者が他のラットに対し快の接触刺激を加えても、初めて会った実験者が他のラットに快の接触刺激を加えても同様に22 kHz超音波発声を示した。すなわち、ラットは快刺激の不平等分配で不快の超音波発声を示すが、この不快の発声は慣れた実験者の時だけ出るのではなく初めての実験者でも出した。不平等分配を行う実験者の親和性に依存しなかったので、この不快情動は親和的な実験者に対する嫉妬感情というよりは快刺激の不公平分配に対する不快情動という考えに合うデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
羨望と嫉妬を区別する行動実験系を確立させ、ラットの不快超音波発声は羨望であることを示唆するデータを得た。
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今後の研究の推進方策 |
不快情動発声にオキシトシン受容体が関与しているかどうかをアンタゴニスト投与の実験で検討する。さらに、遺伝子改変動物を使用した実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンタゴニストを利用した実験を追加し、さらに遺伝子改変動物を使用した実験が開始できれば研究の質が向上すると考えられる。従って、これらの実験のための試薬、動物飼育に関する費用に使用する。
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