研究課題
報告者は賦形剤として広く用いられているセルロースエーテルがプリオン感染モデルマウスにおいて、非常に顕著な延命効果をもたらすこと、その効果はマウスの系統でドラスティックに異なることを見出している。本研究はこの違いを手掛かりとし、賦形剤の抗プリオン効果をとおして賦形剤の生体内における不明な作用を探ることである。令和元年度から2年度においてトランジェネティックマウスを除く、マウス12系統について賦形剤の抗プリオン効果を検証し、これまでに高感受性と低感受性を分ける遺伝子の多型(gmfb 40E/40K)を見出した。さらにgmfbの下流にあると想定されるシグナル伝達系について調査を行ったが、ここでは賦形剤による有意な効果を示す証左は得られなかった。CE低感受性のトランジェネティックマウスではトランスジーンの一つが、マウス17番染色体上のpre-T cell antigen receptorに挿入されていた。また、その遺伝子は胸腺特異的に発現することを見出した。また賦形剤の効果は年単位で長期に持続することから、本年度においては免疫に関連した様々なノックアウトマウスや臓器摘出系において賦形剤の抗プリオン効果について調査を行った。その結果、T細胞の成熟、溶解性顆粒といった因子の関与が示唆された。しかしながら、免疫抑制剤等の併用はほとんど効果を示さず、比較に用いた感受性の高低を十分説明するには至らなかった。これらの結果に基づき、現在骨髄系の細胞の関与と、抹消投与時に賦形剤の蓄積の多い脾臓やリンパ系組織の関与について調査を行っているところである。また、抗プリオン薬剤には賦形剤の原料となるセルロースエーテルのように、規則性を持つ直鎖高分子鎖が散見される。このような性質を持つ化合物の抗プリオン効果についてまとめ、総説として表した。
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