研究課題/領域番号 |
19K22482
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山口 憲孝 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (80399469)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
オートファジーは、細胞の飢餓応答の際にタンパク質などの構成成分を分解し栄養素のリサイクリングを行う現象である。また、オートファジーは細胞内の不要なタンパク質や損傷したオルガネラの除去にも関与している。このように、オートファジーは細胞が様々なストレスに曝された際に、生存のための防御システムとして働くという考えが支配的である。 最近、申請者は、炎症性サイトカインIL-1の刺激によって、細胞のオートファジーが誘導されることを見出した。IL-1刺激によって活性化する転写因子NF-κBを阻害するとオートファジーが抑制されること、オートファジーの誘導に刺激後48~72時間ほど必要なことがわかり、NF-κBの標的遺伝子がオートファジーに関与していることが示された。RNA-seq解析によってIL-1刺激にて発現誘導されるNF-κB標的遺伝子の解析を行い、オートファジーに関わる遺伝子のRNAiスクリーニングを行った結果、機能未解明のミトコンドリア電子伝達系構成因子を新規オートファジー誘導遺伝子として同定した。この遺伝子を細胞に安定発現させると、興味深いことに、栄養が十分な培地にて培養してもオートファジーが誘導されることがわかった。この時、細胞の増殖性を解析すると、この遺伝子の安定発現細胞では増殖速度が上昇していた。オートファジーと細胞増殖との関連を解析するために、約200種類の細胞内代謝物をメタボローム解析によって測定し、細胞内代謝変化について調べた。その結果、グルタミン以外のアミノ酸量が増加し、さらにグルタミンから代謝される核酸前駆体やポリアミンの量も増加していた。このことから、この遺伝子は、IL-1刺激によって発現上昇して飢餓応答とは無関係にオートファジーを誘導し、細胞内構成因子を積極的にリサイクリングして特にグルタミン代謝を活性化し細胞増殖を促進することが初めて明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動の停止を余儀なくされたため。
|
今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスの解析が特に遅れているため、繁殖用マウスを多数購入し、マウス全体の飼育数を増やすことにより解析用マウスの匹数を確保して解析を推進する。また、遺伝子発現ベクターもPCRを用いて作製予定であったが、合成DNAを外注することにより研究を加速化させる。さらに、抗体も自ら樹立する予定であったが、外注して研究を迅速に進める。研究費の残額の大部分を消耗品費に充てることにより、研究全体を効率的に進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により研究活動の停止を余儀なくされ研究に遅れが生じたため。 ノックアウトマウスの解析が特に遅れているため、繁殖用マウスを多数購入し、マウス全体の飼育数を増やすことにより解析用マウスの匹数を確保して解析を推進する。また、遺伝子発現ベクターもPCRを用いて作製予定であったが、合成DNAを外注することにより研究を加速化させる。さらに、抗体も自ら樹立する予定であったが、外注して研究を迅速に進める。研究費の残額の大部分を消耗品費に充てることにより、研究全体を効率的に進める。
|