研究課題
オートファジーは、細胞が飢餓ストレスに曝された際にタンパク質などの細胞内構成成分を分解し栄養素をリサイクリングする現象である。また、オートファジーは細胞内の不要なタンパク質や損傷したオルガネラの除去にも関与している。このように、オートファジーは細胞が様々なストレスに曝された際に受動的に活性化される、細胞生存のための防御システムという考えが支配的である。一方で我々は、炎症性サイトカインIL-1αおよびβの刺激によって、細胞のオートファジーが誘導されることを見出した。IL-1刺激によって活性化する転写因子NF-κBを阻害するとオートファジーが抑制されることがわかり、NF-κB標的遺伝子がオートファジーに関与していることが示された。RNA-seq解析によってNF-κB標的遺伝子の解析を行い、オートファジーに関わる遺伝子のRNAiスクリーニングを行った結果、新規オートファジー誘導遺伝子(Starvation-indipendent autophagy-inducing factor: SIAIF)として同定した。SIAIFは、その詳細な分子機能についてはほとんど分かっていない分子である。興味深いことに、SIAIFを細胞に安定発現させると、栄養が十分な新鮮な培地を用いて培養してもオートファジーが持続的に誘導されることがわかった。この時、細胞の増殖性を解析すると、SIAIF安定発現細胞では増殖速度が上昇していた。メタボローム解析によって測定し、SIAIF安定発現細胞の細胞内代謝変化について調べた。その結果、グルタミン以外のアミノ酸量が増加し、さらにグルタミンから代謝される核酸やポリアミンの量が増加していた。以上より、SIAIFは、IL-1刺激によって発現上昇して飢餓応答とは無関係に能動的にオートファジーを誘導し、細胞内代謝をリモデリングし細胞増殖を促進することが初めて明らかとなった。
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