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2019 年度 実施状況報告書

新規プロファイルデータ解析手法を用いたリード化合物最適化法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 19K22485
研究機関東京大学

研究代表者

楠原 洋之  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00302612)

研究分担者 水野 忠快  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (90736050)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2021-03-31
キーワードリード化合物の最適化 / プロファイリング / トランスクリプトームデータ / OLSA
研究実績の概要

創薬の成功において開発者が期待する作用(主作用)と想定しえない作用(副次作用)の見極めは必要不可欠である薬物処理を施した培養細胞のオミクスデータは薬物の作用を表すという仮定の下、申請者が開発した独自解析手法を適用することにより、薬物作用を分離できる。薬物作用の分離は、主作用、副次作用、双方の理解に資する。本研究では、本アプローチにより主作用が強く、副次作用の弱い化合物を選択するという新たなリード化合物の最適化戦略提唱に向けた萌芽的検証を目的としている。
本年度は、モデル構造類似化合物群を選定するためのプログラムを整備した。まず独自解析手法のプログラムの高速化に取り組んだ。当初300化合物に対し24時間ほどかかっていたものの、①生物学的に意義のある解析対象をランダムサンプリングにより絞り込むアルゴリズムの実装、及び②pythonコードの改良により、およそ30分程度で遂行可能となった(~50倍)。およそ1300化合物を処理した際のトランスクリプトームデータから構成されるデータセットを改良したプログラムに供したところ、現実的な時間で完了し、得られたトランスクリプトームデータに基づく分類の多くは既存のラベルを用いた分類と対応した。しかしながら得られた各群を構成する化合物数は、モデル構造類似化合物群とするには少なかった(< 5種類)。一方、天然物であるフラボノイド骨格を持つ化合物群というような、化合物の構造に基づいた分類に範囲を広げた場合には群として定義するに足りる要素数であった。そこで、既存知見ではなく、構造類似性による化合物の分類を定義するため、様々な化合物構造を数値データにより記述する技術基盤の確立に取り組んだ。これまでに古典的なフィンガープリントによる方法論やニューラルネットワークを用いた方法論を用いて化合物構造をデータ化する技術基盤を構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでに本年度の重要なマイルストーンである独自解析手法プログラムの改良を達成している点は順調である。一方、もう一つ重要なマイルストーンであったモデル構造類似化合物群の選定は達成しえなかった点で計画に遅れが生じていると判断した。モデル構造類似化合物群の選定が遅延している理由として、本研究で用いているデータセット (connectivity map; https://portals.broadinstitute.org/cmap/) 中では、既存のラベルによる分類で定義される群の構成要素数が小さかったことが挙げられる。データセット構築に際して、できる限り広い作用を有する化合物を選定してきたためと考えられる。特異な作用を恣意性なく検出するためには、構成要素数が最低限5種類以上ないことには実施困難と推定される。そこで代替案として、既存知見によるラベルに基づいた分類ではなく、化合物構造の類似性自体に基づいた分類を用いることを着想し、現在本アプローチによる選定に取り組んでいる。

今後の研究の推進方策

次年度は、まずモデル構造類似化合物群選定に取り組む。具体的には、構築した化合物の構造を数値化する方法論を用いて化合物構造を数値化し、当該数値情報を独自解析手法やクラスタリング解析等の常法により、化合物群を定義する。それぞれの方法論による結果とトランスクリプトームデータに基づいた分類とを比較し、構成要素数が5以上となる群をモデル構造類似化合物群として選定する。モデル構造類似化合物群を独自解析手法に供した後、モデル構造類似化合物群で特異な作用を有する化合物と類似の構造を持つ化合物をテスト化合物としてデータセット外から入手する。このとき、既存知見によるラベルのみではなく、今年度に構築した化合物構造を数値化する技術基盤を駆使することで、データ駆動型にテスト化合物を選定可能になる点は本研究を推進する方策として特筆に値する。COVID-19による行動制限はテスト化合物選定後の大きな懸念材料である。現在、行動制限解除後、迅速に研究計画を遂行するため、化合物の作用を推定する方法論の樹立に取り組んでいる。これまでに独自解析手法により得られた作用と関連する転写因子を推定する手法を構築している他、ネットワーク解析へとシームレスに移行可能な技術基盤を確立済みである。以上をもって本研究計画の完遂に取り組む。

次年度使用額が生じた理由

モデル構造類似化合物群の選定が遅延しているため、計画に若干の遅れが生じている。次年度、実施予定であり、主に物品費として使用予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Decomposition Profile Data Analysis of Multiple Drug Effects Identifies Endoplasmic Reticulum Stress-Inducing Ability as an Unrecognized Factor2020

    • 著者名/発表者名
      Katsuhisa Morita, Tadahaya Mizuno, Hiroyuki Kusuhara
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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