研究課題/領域番号 |
19K22486
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤井 晋也 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (60389179)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ホスフィンアミド / 創薬化学 / 元素化学 / 多元素創薬化学 |
研究実績の概要 |
アミド結合(カルボキシアミド)やスルホンアミドは、医薬品をはじめとする生物活性化合物の創製において汎用され、低分子化合物ライブラリの構築や中分子への展開が盛んに研究されている。一方でリンのオキソ酸アミドの一つであるホスフィンアミドについては、合成化学における研究例はあるものの、生物活性化合物への応用を試みた例は少ない。本研究では、生物活性化合物の構造オプションとしてのホスフィンアミドの可能性の開拓を目的とする。 本年度は、生物活性化合物創製におけるホスフィンアミド構造の有用性検討の基礎として、ジフェニルホスフィニル基を持つ種々のP,N,N-トリフェニルホスフィンアミド誘導体を設計・合成し、その安定性に関する検討や生物活性評価を行った。先行研究から、アミン側に電子供与基を持つホスフィンアミドは安定性が低いとされているため、トリフルオロメチル基やシアノ基など電子求引基を持つ化合物について重点的に検討した。予備的検討であるが、これらの官能基を持つホスフィンアミド誘導体が水溶液条件下でも十分な半減期を持つことを見いだした。またそれらの官能基は、特にアンドロゲン受容体やプロゲステロン受容体などのステロイドホルモン核内受容体に対するリガンド化合物のファーマコフォアとして有効であるため、これらの受容体に対する生物活性を評価した。その結果、一部の化合物がプロゲステロン受容体に対してアンタゴニスト活性を示すことを見いだした。これらの結果は、ホスフィンアミドが核内受容体リガンドをはじめとする生物活性化合物の骨格として有効であることを示すものであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホスフィンアミドを基盤骨格とする化合物で生物活性化合物の創製が可能であること実証できたため、有意義な結果であると考えられる。ホスフィンアミドについては、その加水分解における置換基効果が良く調査されているが、本結果から、適切な構造の組み合わせで生理的条件下においても必要な安定性を付与できことが示唆された。今後の研究展開の指針を見いだすことができ、挑戦的研究課題としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、P,N,N-トリフェニルホスフィンアミド誘導体について、物性や安定性、生物活性についての検討を進める。また、P,N-ジフェニルホスフィンアミド誘導体についても、化合物の設計および合成と、物性および生物活性の検討を始める。アミノ基側部分構造としては前年度と同様にアンドロゲン受容体やプロゲステロン受容体に対するリガンド活性を指向して、種々の電子求引性官能基をもつアニリンを用いる計画とする。そしてホスフィン側部分構造の構造展開により、より多彩な化合物の構築が可能になると考えられる。
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