研究実績の概要 |
研究代表者は、以前からタンパク質リン酸化酵素C(PKC)の活性化剤を探索しており、PKCの天然リガンドであるジアシルグリセロール(DAG)の環化誘導体であるDAG-lactoneのシリーズが高いPKC活性化作用を有することを見出している(H. Tamamura, et. al., J. Med. Chem., 43, 3209, 2000)。本研究は、DAG-lactone誘導体や他のPKC活性化剤の構造をもとに、潜伏感染細胞の再活性化作用に特化した化合物の創製を目指している。DAG-lactone誘導体は天然のDAGの構造を基にしているので、フォルボールエステルのような腫瘍プロモーター活性を持たないという特徴がある。また、生体への応用を考えた場合、潜伏感染細胞からのウイルスの放出は危険であり、PKC活性化剤と抗HIV剤が同一箇所に作用し、潜伏感染細胞でウイルスDNAを転写させると同時に新ウイルス粒子の形成を阻害することが望ましいと考えられる。そこで、PKC活性化剤と抗HIV剤とのハイブリッド分子を創製し、潜伏感染細胞に作用し、細胞内で2剤が解離し、ウイルスDNAを転写させると同時に抗ウイルス作用でブロックすることを考えている。2019年度の成果としては、潜伏感染細胞からのHIVの再活性化作用の検定試験において良い結果を与えたPKC活性化剤(DAG-lactone誘導体等)をもとに、さらに構造活性相関研究を推し進め、有用なPKC活性化剤を探索した。また、優れた活性を有するPKC活性化剤とHIVプロテアーゼ阻害剤のハイブリッド分子を合成した。
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