研究課題
申請者は,一酸化窒素(NO)がUnfolded Protein Response (UPR)のセンサー分子として機能するIRE1αをS-ニトロシル化して不活性することを証明してきた.IRE1α経路は分子シャペロンなどの誘導を惹起し,抗細胞死効果を生じることが知られている.したがって,NOによる本経路の抑制は,細胞脆弱性を高めることが予想され,この仮説が正しいことを証明した.本研究は,IRE1分子特異的酸化修飾阻止薬を単離することを目的としている.昨年度までに申請者は,約400万種の化合物ライブライーを用いてin silicoスクリーニングを展開し,酸化修飾を阻害する有力なリード化合物の単離に成功した.最終年度では,本化合物の薬理学特性を明らかにし,さらに,より効力の高い誘導体を作出することを計画し,以下の成果を得ることに成功した.まず,リード化合物は濃度依存的にIRE1αのS-ニトロシル化を抑制することがわかった.さらには,ツニカマイシンなどによる小胞体ストレス活性化をNOは効果的に抑制するが,この作用に対して有効であることを明らかにした.次に,他の分子への影響(分子特異性)についても検討した.その結果,NOによって修飾されるPTENへの作用を調べたところ,残念ながら,本化合物によって阻害されることがわかった.このことから,本分子はその構造から,多くのタンパク質Cys残基と相互作用することが示唆された.そこで,分子特異性を上げるために,さらに2次スクリーニングを行ったところ,新たに3つの候補化合物の単離に成功した.これまでに,このようなタンパク質特異的酸化(S-ニトロシル化)修飾阻止薬は発表されておらず,ここに示した知見は非常にオリジナリティの高いものであると考えている.
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