研究課題/領域番号 |
19K22499
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
秋澤 俊史 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 特任教授 (30202526)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | Catalytide / In silico / Peptide / Amyloid-beta / Alzheimer's disease / ドッキングシミュレーション / 酵素ペプチド |
研究実績の概要 |
本年度、Catalytide と確認されている 5 残基ペプチドを用いて切断点の詳細な検討及びPC を用いて Catalytide の立体構造解析・基質とのドッキングシミュレーションを行い活性中心、切断点との位置関係などの同定を行った。 PC を用いて 5 残基 Catalytide である RYGSG の立体構造を解析した結果、Ser もしくは Tyr が活性中心となる2種類の構造が予測された。Aβ11-29 に対する活性と詳細な切断点の検討を HPLC・LC/MS で経時的に行った結果、特定の2 箇所が優先的に切断されることが明らかとなった。これを基に切断部位及びその近傍のカルボニル基と予測された RYGSG の 2 パターンの活性構造をそれぞれ用い、ドッキングシミュレーション後エネルギーを比較した。結果、切断部位のカルボニル炭素と活性中心が近い構造では他の部位と比較して有意にエネルギーが低いことが明らかとなった。さらに、Tyr が活性中心となる予測構造でもドッキングシミュレーションを行うと、活性中心がSer と考えられる構造に変化したことから、RYGSG の活性中心は Ser であることが考えられた。一方、活性の弱い GSGYRで同様にドッキングシミュレーションを行った結果、切断部位のカルボニル炭素と Ser-OH の距離が有意に離れていることが明らかとなり、加水分解活性の強さとドッキングシミュレーションの結果には相関があると考えられた。また、 GSGHR 及び RHGSG でも結果が得られている。 これらの結果より、ドッキングシミュレーションによる活性中心と切断部位との分子間距離の結果と、切断活性の間には相関があると考えられ、安価なPCによりペプチド結合切断部位の予測や酵素活性を持つ新たなペプチドの創生が可能だと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定では、 5 残基ペプチドの立体構造解析を行い、必須アミノ酸・位置関係の同定、候補ペプチドの選出・合成であった。進捗状況としては、PC を用いた In silico において活性のあった 4 種類のペプチドの立体構造解析から Ser が活性中心であるデータが得られ、活性発現に必須のアミノ酸の同定と立体構造を決定することができた。さらにドッキングシミュレーションを行うことで切断部位と Ser-OH との位置関係から活性発現に必要な立体構造の情報が得られた。この検討により、切断部位に特異性を持たせた Catalytide の創生が可能になると考えられた。さらに多くの 5 残基の立体構造解析が必要ではあるが、次年度予定の酵素耐性獲得のための非天然型アミノ酸、D-アミノ酸への置換及び膜透過や基質特異性向上を目的とした脂質・CPP・Binding site の付加へ向けて、活性発現に必須の立体構造等の有益なデータが得られたと考えている。よって概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において、活性測定及び PC を用いた立体構造解析、ドッキングシミュレーションより活性中心、活性発現に必要なアミノ酸の位置関係等が明らかとなった。よって今後、Catalytide の臨床応用に向けた、下記に示す生体内安定性 (酵素耐性獲得) や膜透過性等の付加による構造解析及び活性測定を行う。 1. 5 残基 Catalytide の各アミノ酸に D-体置換や非天然型アミノ置換を行ったものの立体構造解析を行い活性型及び不活性型と考えられるものを選出する。 2. 選出したペプチドを合成し酵素活性の検討を行う。 3. 酵素活性の解析及び生体内安定性の検討を行い、臨床応用に最適な Catalytide の選択を行う。さらに検討 1. で得られた立体構造の予測と活性を総合的に評価し新規酵素ペプチド創造法を確立する。
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