研究課題/領域番号 |
19K22502
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
家入 一郎 九州大学, 九州大学病院, 教授 (60253473)
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研究分担者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (80423573)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | RNAメチル化 / 薬物トランスポーター / 高血糖 |
研究実績の概要 |
薬物動態に重要な薬物トランスポーターの発現が、高血糖により変動することが示唆されており、薬物トランスポーターに輸送される薬物の血中濃度が糖尿病患者では健常成人と比較して減少することが示されているが、そのメカニズムは不明である。本研究では、高血糖状態がトランスポーター発現に及ぼす影響をRNA修飾機構の一つであるN6-methyladenosine(m6A)解析を行うことで、糖尿病病態時のトランスポーター発現変動機構を解明することを目的とした。薬物トランスポーターの主要な発現臓器の一つである肝臓由来の細胞に対して、低から高濃度グルコース培地にて細胞を培養した。m6A解析に先立ち、上記条件で培養した際のmRNAの脱メチル化酵素fat mass and obesity-associated protein(FTO)の発現について解析を行った。その結果、肝細胞においてFTO蛋白質発現量が、グルコース濃度依存的に減少した。このような変動はFTO mRNA発現には認めなかったことから、グルコースによるFTO発現変動は転写後調節が重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、グルコース濃度依存的にtotal mRNAのm6Aの変動も確認できたことから、m6Aが変動したmRNAを特定するため、m6A-specific methylated RNA immunoprecipitation with next generation sequencing (MeRIP-Seq) を行った。培養細胞からRNAの抽出、RNAフラグメンテーション、m6Aをターゲットとした免疫沈降を行い、得られたRNAにMeRIP-Seqを行い、得られたデータについて現在、アノテーション作業を行っている。当該作業によりRNAメチル化領域の特定が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、高血糖状態におけるRNAメチル化解析について、次世代シークエンスを行うことができた。条件検討を慎重に行ったことからシークエンスを行う時期が2019年度の後半となったため、現時点ではアノテーションが終了しておらず、RNAメチル化領域の特定には至っていない。しかしながら、シークエンス解析自体は問題なく行えたことから、アノテーションによる領域の特定に支障はないと思われる。また、シークエンスに先立ち、mRNAの脱メチル化酵素fat mass and obesity-associated protein(FTO)の変動を明らかにすることができた。これは次年度以降に予定しているRNAメチル化変動のメカニズム解析に関連した内容となるが、前倒しで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
MeRIP-Seqにより得られた結果をアノテーションすることにより、高グルコース濃度にてRNA修飾が変動した領域を特定する。当該領域のRNAメチル化の有無が薬物トランスポーター発現・機能に及ぼす影響を、Western blotting ならびに基質薬物の輸送実験により行う。薬物輸送実験は、培養細胞による単層膜を作成し、機能解析対象となる薬物トランスポーターの基質薬物を用いて薬物透過能を測定することで行う。 RNA修飾の変動メカニズムの解明は、既に脱メチル化酵素FTOの蛋白質発現減少を示唆する結果を得ていることから、FTOの転写後調節機構のメカニズムについて、シクロヘキシミドを用いたタンパク質合成阻害を行うことで解析する。また、FTOの発現変動が薬物トランスポーターのRNAメチル化ならびに薬物輸送能に及ぼす影響を明らかにすることで、高血糖が薬物トランスポーター発現を変動させるメカニズムの詳細を特定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では本年度にRNAメチル化領域の特定を行い、当該領域の機能解析を培養細胞を用いて開始する予定であった。しかし、シークエンスのアノテーションが作業中であることから、培養細胞にかかる培地等の諸経費の購入を次年度に行うことになった。このため、非常に少額であるが次年度使用額が生じ、当該金額は次年度早々に培地等の購入に当てる計画である。
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