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2019 年度 実施状況報告書

乳腺上皮間リンパ球による新規母子免疫機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K22507
研究機関東京大学

研究代表者

新田 剛  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (30373343)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2021-03-31
キーワード乳腺 / リンパ球 / T細胞 / IEL / Granzyme
研究実績の概要

我々は、マウスの乳腺房を形成する乳腺上皮細胞の間隙に、ユニークなリンパ球「乳腺IEL (intraepithelial lymphocyte)」が多く存在することを見出した。乳腺IELはCD8 T細胞とgamma/delta T細胞からなり、Granzyme A, B等のタンパク質を恒常的に高発現する。Granzymeは、標的細胞のアポトーシス誘導や細菌の殺傷に寄与するプロテアーゼの一種であり、乳腺の管腔側に放出され、実際にマウスの乳中に検出された。本研究では、乳腺IELが抗菌作用因子を分泌することによって乳中の細菌叢と新生児の腸内細菌叢を制御する、という新規の母子免疫機構を想定し、この仮説を実験的に検証することを目的とする。
初年度には、マウス乳腺からIEL(CD5- CD8 T細胞およびCD5- gamma/delta T細胞)をソーティングした。同時に、乳腺組織や血管中に存在する通常のCD8 T細胞とgamma/delta T細胞(CD5+)、および腸管IELをソーティングした。これらを対象として、mRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行った。乳腺IELは、通常のT細胞群とは異なり、腸管IELに近い遺伝子発現パターンを示した。具体的には、Granzyme A,B,Cの高発現、ケモカインCCL3,CCL4,CCL5の高発現、ケモカイン受容体CCR7やS1P受容体S1PR1、IL7Rの低発現が特徴であった。また、gamma/delta T細胞においては、Vgamma4およびVgamma7陽性のサブセットが多いことがわかった。これらの情報をもとに、乳腺IELに高発現するGranzymeA,B,Cに着目し、これら3遺伝子を同時に欠損するマウスを作製した。今後このマウスにおける乳腺の形成、乳腺IELの分化、乳中成分の変化などを解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画の通り、マウス乳腺からIELを単離し、mRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、乳腺IELに特徴的な遺伝子発現パターンを見出した。乳腺IELの実体は、CD8alpha/alpha T細胞およびVgamma4+ gamma/deltaT細胞、Vgamma7+ gamma/deltaT細胞であることがわかった。また、Granzyme A,B,Cの高発現、ケモカインやケモカイン受容体の発現パターンなどから、乳腺IELは腸管IELと類似した細胞といえる。一方、腸管IELにはみられないkiller lectin-like receptor遺伝子を多く発現することから、NK細胞に似た特徴をもつことが明らかになるなど、予想外の進展があった。さらに、乳腺IELにはGranzyme A,B,Cがきわめて高いレベルで発現していることに着目し、CRISPR/Cas9法を用いてこれら3遺伝子を同時に欠損するマウスを作製し、表現型解析の準備を進めている。

今後の研究の推進方策

(1) 乳腺IELの多様性を理解するため、シングルセルRNAseq解析を行う。解析にあたっては、初年度に得たバルクRNAseqデータを活用する。研究展開に応じて、マーカーを用いて単離した細胞のバルクRNAseq解析を行い、シングルセル解析の解像度不足を補強する。
(2) Rag欠損マウスに正常マウスの胸腺細胞や末梢T細胞を移入して妊娠させ、乳腺IELの分化のしくみ(乳腺組織に局在する前駆細胞に由来するのか、または末梢のリンパ球が乳腺に移動して乳腺IELへと分化するのか)を明らかにする。
(3) 初年度に作製したGranzyme A,B,C欠損マウスの表現型解析を進める。乳腺の形成、乳腺IELの分化、乳中のタンパク質成分や細菌叢への影響を中心に解析する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] King's College London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      King's College London
  • [雑誌論文] Retroviral Gene Transduction into T Cell Progenitors for Analysis of T Cell Development in the Thymus2020

    • 著者名/発表者名
      Muro Ryunosuke、Takayanagi Hiroshi、Nitta Takeshi
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 2111 ページ: 193~203

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-0266-9_16

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soluble RANKL is physiologically dispensable but accelerates tumour metastasis to bone2019

    • 著者名/発表者名
      Asano Tatsuo、Okamoto Kazuo、Nakai Yuta、Tsutsumi Masanori、Muro Ryunosuke、Suematsu Ayako、Hashimoto Kyoko、Okamura Tadashi、Ehata Shogo、Nitta Takeshi、Takayanagi Hiroshi
    • 雑誌名

      Nature Metabolism

      巻: 1 ページ: 868~875

    • DOI

      10.1038/s42255-019-0104-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ras homolog gene family H (RhoH) deficiency induces psoriasis-like chronic dermatitis by promoting TH17?cell polarization2019

    • 著者名/発表者名
      Tamehiro Norimasa、Nishida Kyoko、Sugita Yu、Hayakawa Kunihiro、Oda Hiroyo、Nitta Takeshi、Nakano Miwa、Nishioka Akiko、Yanobu-Takanashi Reiko、Goto Motohito、Okamura Tadashi、Adachi Reiko、Kondo Kazunari、Morita Akimichi、Suzuki Harumi
    • 雑誌名

      Journal of Allergy and Clinical Immunology

      巻: 143 ページ: 1878~1891

    • DOI

      10.1016/j.jaci.2018.09.032

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular mechanism of Syk-mediated TCR signal in gdT cells2019

    • 著者名/発表者名
      Ryunosuke Muro, Takeshi Nitta, Hiroshi Takayanagi
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会
  • [備考] 東京大学大学院医学系研究科 免疫学 高柳研究室 研究内容

    • URL

      http://osteoimmunology.com/research.html

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公開日: 2021-01-27  

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