研究実績の概要 |
ヒト精子幹細胞を培養するためには、この細胞を精巣から効率よく回収する必要がある。表面抗原の同定を行ったところ、ヒト精子幹細胞ではチロシンキナーゼであるEPHA2を発現していることを昨年度に発見した。マウスの精巣においてはEPHA2の発現はA single spermatogoniaの中では極めて限局しており、これまで精子幹細胞のマーカー分子と言われているGFRA1よりも発現する細胞が少数であった。EPHA2は細胞増殖の促進を行うことが知られているために、このリガンド分子であるEPHRINーA1分子を培養細胞に加えてやることで、精子幹細胞の自己複製分裂を刺激できる可能性があると考えた。しかしながら、EPHA2の刺激のみでは精子幹細胞の増殖を誘導することは出来なかった。一方で上記の実験に加えて、EPHA2を指標にして回収したヒト精原細胞を利用して、ヒト精子幹細胞の増殖を刺激する分子を探す目的でケミカルライブラリーのスクリーニングを行った。用いたライブラリーはSelleck(1,224個)、Prestwick (1,120個), Calbiochem (65個); Tocris (1,280個); Apexbio (2,525 個)である。この実験ではEPHA2発現細胞をmagnetic cell sortingにより回収し、mouse embryonic fibroblast上に培養し、上記の化合物と共に細胞増殖を刺激できるものを探索している。また全てのスクリーニングは終了しておらず、現在もスクリーニングを継続して行っている。
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