研究実績の概要 |
上皮細胞はapical, basolateralという極性を持つ。上皮細胞以外の極性を持つ細胞と上皮細胞の極性の分子機構は共通であろうか?我々はRab8やRab8結合タンパク質EHBP1L1、EHBP1L1結合タンパク質CD2APの各組織での量、細胞 局在、ノックアウト(KO)マウスの解析から、小腸上皮細胞の極性機構は赤芽球、T細胞、腎足細胞の極性形成機構と共通性があるが、腎尿細管上皮細胞の極性機構とは異なる可能性を提示している。我々はその共通機構を「Rab8依存性極性機構」と呼び、これが、小腸の上皮細胞、赤芽球、T細胞、腎の足細胞など、多くの種類の細胞における極性の形成や維持に普遍的に働くことを実証するために次の1-3の解析を行った。 1. Rab8, EHBP1L1, CD2APの発現が小腸、赤芽球、T細胞、足細胞で共に高いかどうか?:RNAseqを用いた解析により、Rab8およびその類縁分子Rab10がこれらの細胞で発現が高いことを確認した。2. Rab8, EHBP1L1, CD2APが細胞で同じ細胞小器官に存在するか?:これら3者が蛍光免疫染色により細胞(HeLa細胞、赤芽球)のリサイクリングエンドソームと呼ばれる細胞小器官に共局在することを明らかにした。3. Rab8, EHBP1L1, CD2APのKOマウスが共通する表現型を示すか? :Rab8,Rab10,EHBP1L1は赤芽球でリサイクリングエンドソームのマーカーであるトランスフェリン受容体と共局在した。赤芽球ではRab10の発現がRab8よりも高いため、赤芽球でEHBP1L1, Rab10のノックダウンを行ったところ、共に脱核の効率が低下することが判明した。また骨格筋でも核が偏在するが、Rab8/10, EHBP1L1やその結合分子Bin1がその過程にも関わる可能性を示唆するデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上皮細胞の極性に重要と考えられる遺伝子(Rab8,Rab10,EHBP1L1,CD2AP,Bin1)の発現量が赤芽球などの非上皮細胞でも高いことを確認し、それらの分布が赤芽球でも共局在することを明らかにした。また、EHBP1L1やRab10を赤芽球でノックダウンすると、脱核の際の核の偏在化に大きな影響を及ぼすこと、またEHBP1L1ノックアウトマウスでは骨格筋の核の偏在化に異常をきたすことを示唆するデータを得たことから、多種多様な細胞種で共通の極性化機構があることが大きく示唆するデータを得たため。
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