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2020 年度 実施状況報告書

異数性モザイクの発生過程における正常核型と異数性ライン間での細胞競合に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K22515
研究機関広島大学

研究代表者

松浦 伸也  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)

研究分担者 宮本 達雄  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40452627)
阿久津 シルビア夏子 (AkutsuSilviaNatsuko)  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (10822299)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード染色体 / 異数性 / 細胞競合
研究実績の概要

異数性モザイクとは、染色体数の異なる細胞群が同一個体に混在する病態であり、とくに正常核型とトリソミーが混在した個体をモザイク・トリソミーと呼ぶ。モザイク・トリソミーは、減数分裂の染色体不分離によって生じたトリソミーの受精卵が、卵割の過程で一部の細胞において余剰の染色体が排除され正常核型となる「トリソミーレスキュー」が生じることに起因する。一般的にモザイク・トリソミーの表現型は、フル・トリソミーに比べて軽く、また、正常核型細胞のモザイク頻度が高いほど表現型が軽いと考えられている。さらに興味深いことに、モザイク・トリソミーのモザイク率が発生組織や時期によって変動する現象が報告されており、正常核型細胞とトリソミー細胞との競合が臨床像を決定する機構の存在が示唆される。しかし、正常核型細胞とトリソミー細胞との細胞競合現象については不明な点が多い。
最近、トリソミーレスキュー現象が、細胞の初期化によって誘導されることが報告されており、本申請予備実験においてもフル・トリソミー21由来皮膚線維芽細胞の初期化によって正常核型iPS細胞クローンの単離に成功している。そこで、ゲノム編集技術を用いて蛍光標識したトリソミーiPS細胞とトリソミーレスキューiPS細胞をタイムラプスイメージングして、細胞増殖相と分化相における正常核型細胞と異数性細胞との細胞競合の実体を明らかにすることを計画した。
これまでに、非相同末端結合を用いた高効率な遺伝子ノックイン技術であるCRISPR/ObLiGaRe法を用いて、トリソミーiPS細胞およびトリソミー・レスキューiPS細胞のセーフハーバーサイトAAVS1遺伝子座に、核移行シグナルを付加したEGFPまたはRFP遺伝子を1コピーずつノックインした。これにより、遺伝的背景を厳密に揃えた状態で異数性モザイク集団の細胞競合実験系を構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、非相同末端結合を用いた高効率な遺伝子ノックイン技術であるCRISPR/ObLiGaRe法を用いて、トリソミーiPS細胞およびトリソミー・レスキューiPS細胞のセーフハーバーサイトAAVS1遺伝子座に、核移行シグナルを付加したEGFPまたはRFP遺伝子を1コピーずつノックインした。遺伝的背景を厳密に揃えた状態で異数性モザイク集団の細胞競合実験系を構築したことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられた。

今後の研究の推進方策

異数性モザイク集団における細胞競合現象の普遍性を検証するために、ダウン症候群に加えて、トリソミー13(パタウ症候群)、トリソミー18(エドワーズ症候群)患者由来の初代線維芽細胞の初期化を行い、各iPS細胞の核型解析を行う。正常核型細胞クローンを少なくとも2クローン以上単離するすることを目指す。

次年度使用額が生じた理由

初年度は、トリソミーiPS細胞およびトリソミー・レスキューiPS細胞のセーフハーバーサイトに、核移行シグナルを付加したEGFPまたはRFP遺伝子をCRISPR/ObLiGaRe法を用いて1コピーずつノックインした。速やかに目的のクローンが得られたため、助成金を次年度へ繰り越しすることが可能となった。
次年度は、異数性モザイク集団における細胞競合現象の普遍性を検証するために、ダウン症候群に加えて、トリソミー13、トリソミー18患者由来の初代線維芽細胞の初期化を行い、各iPS細胞の核型を解析して、ダイソミーにレスキューされた細胞を離する計画である。初年度からの繰り越し額と、翌年度分の助成金を合わせて、細胞初期化の試薬ならびにFISHおよび染色体解析試薬に執行することを計画している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] A novel CDK-independent function of p27Kip1 in preciliary vesicle trafficking during ciliogenesis2020

    • 著者名/発表者名
      Yukimoto Hiroki、Miyamoto Tatsuo、Kiyono Tohru、Wang Shujie、Matsuura Shinya、Mizoguchi Akira、Katayama Naoyuki、Inagaki Masaki、Kasahara Kousuke
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 527 ページ: 716~722

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2020.05.048

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Premature aging syndrome showing random chromosome number instabilities with CDC20 mutation2020

    • 著者名/発表者名
      Fujita Harumi、Sasaki Takashi、Miyamoto Tatsuo、Akutsu Silvia Natsuko、Sato Showbu、Mori Takehiko、Nakabayashi Kazuhiko、Hata Kenichiro、Suzuki Hisato、Kosaki Kenjiro、Matsuura Shinya、Matsubara Yoichi、Amagai Masayuki、Kubo Akiharu
    • 雑誌名

      Aging Cell

      巻: 19 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1111/acel.13251

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 放射線感受性の遺伝的個人差を規定する候補素因としてのNBS1遺伝子I171V多型の定量的評価2020

    • 著者名/発表者名
      冨岡啓太、阿久津シルビア夏子、柳原啓見、田内広、山本卓、工藤美樹、小林正夫、宮本達雄、松浦伸也
    • 雑誌名

      広島医学

      巻: 73(4) ページ: 224-227

  • [雑誌論文] ゲノム編集技術を用いた培養細胞における疾患モデリング2020

    • 著者名/発表者名
      宮本達雄、藤田和将、松浦伸也
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 273(9) ページ: 20977-20982

  • [学会発表] 繊毛病としてのペルオキシソーム形成不全症・Zellweger症候群2020

    • 著者名/発表者名
      宮本達雄、細羽康介、板橋岳志、岩根敦子、阿久津シルビア夏子、落合 博、斎藤裕見子、山本 卓、松浦伸也
    • 学会等名
      第65回日本人類遺伝学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 染色体分配異常を伴う新規早老症患者におけるCDC20遺伝子変異の同定と分子病態の解析2020

    • 著者名/発表者名
      藤田 春美、佐々木 貴史、宮本 達雄、阿久津 シルビア 夏子、佐藤 尚武、森 毅彦、中林 一彦、秦 健一郎、鈴木 寿人、小崎 健次郎、松浦 伸也、松原 洋一、天谷 雅行、久保 亮治
    • 学会等名
      第65回日本人類遺伝学会
  • [学会発表] 先天異常症候群集団外来:モザイク型ダウン症候群外来の報告2020

    • 著者名/発表者名
      井坂美帆、大場大樹、小林美和、阿久津シルビア夏子、宮本達雄、松浦伸也、大橋博文
    • 学会等名
      第65回日本人類遺伝学会
  • [学会発表] 機能ゲノミックスを用いた放射線感受性個人差を規定する遺伝素因の探索2020

    • 著者名/発表者名
      宮本達雄, 冨岡啓太, 藤田和将, 阿久津シルビア夏子, 工藤美樹, 小林正夫, 岡田賢, 田内広, 松浦伸也
    • 学会等名
      第63回日本放射線影響学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Peroxisomes ensure to supply cholesterol into the ciliary membrane: a lesson from a peroxisome-biogenesis disorder Zellweger syndrome2020

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Miyamoto, Kosuke Hosoba, Takeshi Itabashi, Atsuko H. Iwane, Silvia Natsuko Akutsu, Hiroshi Ochiai, Yumiko Saito, Takashi Yamamoto, Shinya Matsuura
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] NBS1 I171V多型による放射線感受性個人差の定量的評価2020

    • 著者名/発表者名
      冨岡啓太、Silvia Natsuko Akutsu、柳原啓見、田内 広、山本 卓、小林正夫、工藤美樹、藤田和将、宮本達雄、松浦伸也
    • 学会等名
      第45回中国地区放射線影響研究会
  • [学会発表] iPSC reprogramming-mediated aneuploidy correction in autosomal trisomy syndromes2020

    • 著者名/発表者名
      Silvia Natsuko Akutsu, Tatsuo Miyamoto, Keita Tomioka, Daiju Oba, Hirofumi Ohashi, Shinya Matsuura
    • 学会等名
      The 5th International Symposium of the Network-type Joint Usage/Research Center for Radiation Disaster Medical Science
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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