研究課題
現在、我が国におけるシフトワーク従事者は1200万人以上にのぼると推計され、その家族も含めると、影響はさらに広範であると考えられる。さらに、夜でありながら光が溢れる環境は、子供たちの生活リズムを大きく変化させ、心身の発達に成長後も続く影響を及ぼす可能性も指摘されている。このように生活時間と、生まれながらに備わる体内時計との不適合がもたらす概日リズム障害は、幼若期・成人期・老年期の全てのライフコースに関わる病態である。しかし、例えば、「不規則な生活は健康を害するのでやめましょう」という啓蒙活動や生活指導のみでは課題解決は不可能である。従って、概日リズム障害の解決には、個人ごとの身体の状態把握と個別予防介入が必須である。そのためには、体内時計の撹乱による恒常性破綻プロセスを解明し、病態成立メカニズムを時系列で理解することが不可欠である。しかし、これまで実際に「体内時計の撹乱」と「生体の恒常性破綻」の因果性を検証し、ヒトに外挿しようとする研究は国内外で非常に少なく、その機序は不明なままであった。体内時計の撹乱と関連する健康問題は、解決が強く求められている喫緊の社会的課題であるにもかかわらず、以上のような理由で社会実装可能な対策が全く立てられていないのである。本研究では、環境撹乱による概日リズム障害が生体に及ぼす影響をノンバイアスに探索する「概日リズム障害のマウスコホート研究」系の構築を進め、明暗周期シフトによる長期の概日リズム不適合により、寿命の短縮、肝臓のNAFLD様慢性炎症、及び老化関連T細胞の増加を伴う免疫恒常性の破綻を引き起こし、これらが顕著な病態として表出することを見出した (Sci. Rep, 2020:責任著者)。
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