薬剤添加依存的にRomanescoを発現させるES細胞及びiPS細胞株を用いてグアニン四重鎖形成を制御するタンパク質の同定を行った。in vitroでの先行研究から提唱されているRNA結合タンパク質を過剰発現させた後にドキシサイクリンの添加によってRomanescoの発現を誘導し、Airyscanを用いた高感度な蛍光観察によって候補タンパク質の発現依存的なグアニン四重鎖形成の阻害を観察した。 また、Romanescoの安定発現株にレンチウイルスを用いてmiRNAを発現させることでRNA結合タンパク質をノックダウンし、Romanesco蛍光強度の減衰を指標としたグアニン四重鎖形成の阻害を見積もった。 上記の実験から、既存のRNA結合タンパク質のうちいくつかはグアニン四重鎖形成を阻害する活性を持つことが示唆されたと同時に、in vitro実験での探索からグアニン四重鎖形成の阻害活性が示唆されていたタンパク質の一部はin vivoにおいてはグアニン四重鎖形成の阻害活性を持たないことが示唆された。 さらに、一部のタンパク質は分化後のHEK293細胞では活性を示したが未文化のES及びiPS細胞においては活性を示さなかった。このことは分化前と分化後で異なるRNAの立体構造制御機構が存在している可能性を示唆している。 本研究によって細胞内で実際にグアニン四重鎖形成の阻害活性を持つことが示唆されたRNA結合タンパク質はヒトの疾患に関与していることが先行研究において明らかになっていることから、本研究の目標である「RNA高次立体構造の生物学的意義の解明と疾患への応用」は当初の予定通り達成された。
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