プリオン病は急速に進行する神経変性が特徴の致死性の神経変性疾患である。プリオンタンパク質(PrP)はプリオン病の病因蛋白質であり、PrPの高次構造変化は本疾患の発症の原因である。プリオンタンパク質は分泌系のタンパク質であるから、小胞体、ゴルジ体を経て細胞膜に移行するが、遺伝性のプリオン病や加齢マウスにおいはPrPがミトコンドリアに局在するものが報告されている。また、健常な若年マウスにおいてもPrPがミトコンドリアに局在しているとの報告もある。ER-ミトコンドリア関連膜(MAM)にはアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患関連病因因子が局在することが知られており、プリオン病においても上記のとおり小胞体とミトコンドリア双方の関与が示唆されている。しかしながら、MAMを形成する微小領域はその小ささ故にサンプルの単離が難しく、したがって解析が困難である。本年度は、昨年度に構築したアッセイ系を用い、改良型のレーザーマイクロダイセクション装置を使用して、MAM領域を単離するためにHeLa細胞を用いて核内の1ミクロン径の円形領域の単離を試みた。その結果、当該領域に含まれる核内成分が単離可能なことが確認された。また、マウス神経芽細胞腫由来N2a細胞を用いてPrPが蓄積したミトコンドリア領域の切削を行ったところ、目的どおりに単離可能なことを確認することができた。  
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