研究課題/領域番号 |
19K22526
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 昌平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | dysbiosis / アレルギー疾患 / 制御性T細胞 / 組織特異性 |
研究実績の概要 |
本研究では、Foxp3<A384T>変異マウス(以下A384Tマウス)の皮膚、肺、大腸に自然発症するアレルギー性炎症における常在細菌叢の役割を明らかにすることを目的としている。これまでに、A384Tマウスと野生型マウスを無菌化し、A384T変異と無菌環境という2つの要因が2型炎症に与える影響を解析してきた。昨年度までの解析から、肺における2型炎症が無菌化により増悪する傾向が見られていた。今年度解析する個体数を増やして解析した結果、A384T変異による2型炎症(Th2細胞、好酸球、間質マクロファージの数)は無菌化による影響を受けないことが明らかになった。一方、大腸においては、A384T変異による好酸球数の増加が無菌化によりキャンセルされるものの、Th2細胞数には変化がないことが明らかになった。このことから、大腸におけるTh2細胞数の増加はA384T変異にのみ依存する一方で、好酸球数はA384T変異と常在細菌の交互作用により増加することが明らかになった。そして、大腸の好酸球数を制御する細菌種を同定するために、16S rRNA-seq解析による菌叢解析を行った。現在そのデータ解析を進めている。 血清中IgE濃度については、A384T変異と無菌化両者により増加することが分かったが両者の顕著な交互作用は認められなかった。一方、血清中IgG1濃度の上昇はA384T変異にのみ依存し、無菌化による影響はないことがわかった。また、腸間膜リンパ節のIL-4産生Tfh細胞数はA384T変異の有無によらず無菌化により増加した一方、IL-4産生non-Tfh細胞はA384T変異と無菌化両者により増加した。このことから、A384T変異はTfhを介した胚中心応答ではなく、IL-4産生non-Tfhを介した濾胞外応答によりIgE, IgG1産生を亢進する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はCOVID-19の蔓延に伴う研究活動の中断・制限はあったものの、A384Tマウスの肺、大腸に自然発症するアレルギー性炎症における常在細菌叢の役割を明確にすることができた。(1) A384T変異によるTh2細胞数の増加に関しては肺でも大腸でも常在細菌の寄与はないこと。(2) 一方、A384T変異による好酸球数増加に関しては、肺では常在細菌の寄与はない一方で、大腸では腸内細菌との相互作用があること。(3) また、A384T変異と無菌化は独立のメカニズムでIgE産生を亢進する一方、IgG1産生の亢進はA384T変異にのみ依存すること。以上から、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2つの研究課題について研究を進める。(1) A384T変異が常在細菌依存的に大腸の好酸球数を増加させるメカニズム。具体的には、様々な抗菌薬でA384Tマウスを処理し、大腸の好酸球数を減少させる特定の抗菌薬があるか、検討を進める。そのような抗菌薬があった場合、16S rRNA-seqにより腸内細菌叢を解析し、好酸球数を制御する腸内細菌種を同定する。また、大腸におけるTh2非依存的な好酸球集積のメカニズムを明らかにするために、大腸組織のRT-qPCRにより好酸球を誘因・増殖させるケモカイン、サイトカインの発現を解析する。 (2) A384T変異によるIgE産生亢進メカニズム。IgE産生の場を同定し、A384T変異によりどのようなThサブセットの制御が選択的に破綻するのか、明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による緊急事態宣言の発出に伴い、2020年4月~6月にかけて所属機関では研究活動が中断され、その後も研究活動が大きく制限された。このため、計画した研究の実施に遅れが生じ、翌年度も研究を継続する必要性が生じた。
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