研究実績の概要 |
本研究では、Foxp3 A384T変異マウス(以下A384Tマウス)に自然発症するアレルギー性炎症における常在細菌叢の役割を明らかにすることを目的としている。これまでに、肺における2型炎症は常在細菌非依存的である一方で、大腸における好酸球の集積は常在細菌に依存することを見いだしている。今年度、SPF環境のA384Tマウス大腸では、好酸球の集積に加えて、2型サイトカイン(Il5, 13)とエオタキシン(Ccl11, 24)の発現がmRNAレベルで亢進していること、この発現亢進が無菌マウスでは消失することを明らかにした。そして、このIl5とIl13の発現亢進は、ILC2ではなくCD4+ T細胞における発現亢進に起因していることを見いだした。一方、2型サイトカインを発現する能力をもったTh2細胞の数は無菌化により影響を受けなかったことから、腸内細菌はTh2細胞の分化・集積ではなく、分化したTh2におけるサイトカイン発現に必要であると考えられた。次に、4種抗生剤(アンピシリン、ネオマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾール)投与実験を行った。その結果、用いたアンピシリンのロットによって異なる結果が得られた:1つのロット(①)ではA384Tマウス大腸の好酸球数が対照群と比べてむしろ増加したのに対し、別のロット(②)では減少傾向を示した。アンピシリンの力価を比較したところ、ロット①はロット②の約1/10の力価であった。16S rRNA-seq解析の結果、ロット①を用いた抗生剤投与群では、対照群とロット②を用いた抗生剤投与群と比べて腸内細菌科の細菌が特異的に増加していた。以上の結果から、A384T大腸における2型免疫は、腸内細菌科の細菌により活性化したTh2により惹起されることが示唆された。
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