研究課題
インフルエンザウイルスのゲノムRNAは8分節に分かれている。各RNA分節はウイルス核タンパク質およびRNAポリメラーゼと結合し、リボ核酸タンパク質複合体(RNP複合体)として存在する。感染細胞で形成される子孫ウイルス粒子が増殖能を持つためには、8種類のRNA分節を全て取り込まなければならない。しかし何本のRNA分節がどのように子孫ウイルス粒子内に取り込まれるかという”ゲノムパッケージング機構”は、ウイルス学の古典的命題として半世紀以上も謎のままだった。申請者はこれまでに、8種類のRNP複合体が規則的な配置(「1+7」構造)をとって取り込まれることを明らかにした。そこで本研究では、ウイルスゲノムRNAを介したRNP複合体間相互作用の立証とその分子基盤の解明を目指した。これまでに、in vitro RNA合成系を用いて8種類のvRNAおよび各vRNAの3'端および5'端のRNAを合成し、gel shift assayを用いてvRNA-vRNA間相互作用の解析を実施した。その結果、in vitroにおいて、8種類のvRNAがそれぞれ複数のvRNAと相互作用しネットワークを形成していること、多くの相互作用がゲノムパッケージングシグナル間で認められることを明らかにした。本年度はin vivoにおいてパッケージングシグナル間の相互作用が存在するかどうかを解析した。HA分節のパッケージングシグナルに変異を導入したウイルスを作出し、減弱したゲノムパッケージング効率を回復させる変異を解析したところ、PB2分節のパッケージングシグナルに変異が導入されていることを見出した。すなわち、NPやポリメラーゼが結合したvRNPの状態においても相互作用が存在する可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、in vitro RNA合成系を用いて8種類のvRNAがそれぞれ複数のvRNAと相互作用しネットワークを形成していること、多くの相互作用がゲノムパッケージングシグナル間で認められることを明らかにした。また、実際のウイルス感染細胞において、すなわちNPやポリメラーゼが結合したRNPの状態でも2つのRNA分節間に相互作用が存在しうることを見出した。
RNPにおける分節間RNA-RNA相互作用を明らかにするため、ウイルス粒子内RNPをソラレンで架橋して解析を進める。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Cold Spring Harb Perspect Med.
巻: in press ページ: in press
10.1101/cshperspect.a038497.
Virol J
巻: 17 ページ: 107
10.1186/s12985-020-01357-3.