研究課題/領域番号 |
19K22530
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝長 啓造 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (10301920)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | ボルナウイルス / ウイルスベクター / ADRA / Cas13 |
研究実績の概要 |
研究代表者が開発したボルナ病ウイルス(BoDV)ベクターは、細胞傷害性が低く、神経系細胞に効率的に導入可能であること、また鼻腔より非侵襲的に脳への送達させることが可能な新規RNAウイルスベクターである。本研究は、既存のウイルスベクターにはないBoDVベクターの特徴を進化させるとともに、生体への適用において安全性を高めることで、革新的な遺伝子治療技術として実用化を目指すものである。本研究では、BoDVベクターを生体内への導入後、ベクターゲノムに自己編集を誘導させることで、伝播能力あるいは複製能力を欠損した安全なウイルスベクターへと変化させる技術構築を行っている。具体的には、RNA編集酵素であるADAR2ならびにCas13を利用したBoDVベクターの作製を行っている。研究開始後、これまでにADAR2のBoDVのゲノムへの編集活性について培養細胞を用いた解析を行った。その結果、ADAR2は感染細胞においてBoDVゲノムRNAと結合し、ゲノムにA-to-G変異を効率的に誘導していることを明らかにした。また、BoDVゲノムでのA-to-G変異部位はがX遺伝子領域に多いことを突き止めた。現在、BoDVゲノムにおけるA-to-G変異部位の配列解析を行っている。今後は配列解析から得られたデータをもとに、ADAR2により編集を受けやすい配列を同定しベクターへと導入することで、編集型ベクターの作製を行うとともに、Cas13-ガイドRNAを発現させることでによる自己切断するベクターへと応用を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、細胞内に存在するRNA編集酵素であるADAR2ならびにCRISPR酵素でRNAの編集活性を持つCas13を利用して、細胞核内で持続的遺伝子発現をするBoDVベクターのゲノムRNAに編集と切断を誘導することで、導入細胞内で複製能力を欠損する安全なウイルスベクターの構築を行うものである。これまでに、ADAR2の編集活性に関して、BoDVベクターのゲノムに対する編集効率を確認し、実際にどのようなゲノム編集が導入されるのかについて解明した。確認した編集配列のベクターへの搭載までは進まなかったが、着手は行っているためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに同定したADAR2の標的配列をBoDVベクターゲノムのエンベロープあるいは転写酵素内への導入を試みる。また、Cas13-sgRNA発現ADAR2編集型BoDVベクターを作製するために、ADAR2による編集を受けたBoDVベクターのmRNAに特異的に結合するガイドRNA(sgRNA)を作製するとともに、Cas13がsgRNAの標的部位を切断できるのかについて、BoDVベクターが導入された培養細胞にて確認する。効率の良いsgRNAを同定し、ユニットとしてCas13-sgRNAを共に発現するBoDVベクターの作製を行う。作製したBoDVベクターの自己編集・切断活性は培養細胞とマウス脳で確認を行うことで、さらなる改良を加え、効率の良い自己編集型RNAウイルスベクターの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は培養細胞を使用してADAR2のBoDVベクターゲノムへの編集活性を確認した。研究に関しては概ね計画どおりであったが、次世代シークエンス解析を行う予定が通常のPCR解析に変更したことに加え、年度末に国際学会への参加を予定していたが新型コロナウイルスの影響で中止になったため旅費等の執行がなく、次年度使用額となった。使用計画に関しては、Cas13によるベクターRNAの切断効率に関して、次世代シークエンスを用いた解析に使用する。また、今年度に学会の開催がある場合には旅費としての使用を行う。
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