研究課題
本研究では、新規マウスモデルを樹立し、免疫グロブリンIgG4産生B細胞の応答とIgG4抗体の疾患への関与を解明することを目的にする。ヒトIgG4関連疾患では血中IgG4免疫グロブリンの高値と、罹患部のIgG4陽性プラズマ細胞の浸潤および線維化を特徴とする。自己免疫機序の関与が想定されているが、未だに原因は不明であり、疾患発症機序の解明と新規治療法の開発が急がれる。また、IgG4関連疾患ではアレルギー症状を伴うことが多い一方で、IgG4免疫グロブリンがアレルギーを抑制することが示されており、IgG4免疫グロブリンとアレルギー疾患との関連性が疑われているものの、詳細は不明である。IgG4に関する研究が進展しない大きな理由として、マウスにIgG4免疫グロブリンが存在しないことが挙げられる。そのため、IgG4陽性B細胞やIgG4のin vivo解析ができないのが現状である。そこで、本研究課題ではこれらの問題点を克服するために、ヒトIgG4を産生する新規マウスを樹立・解析することにより、IgG4陽性B細胞の活性化・分化機序とIgG4抗体の役割解明を目指す。昨年度は、マウスIgG1の定常領域(Cgamma1)をヒトIgG4の定常領域と入れ替えたマウス(gamm1-hIgG4マウス)の作成に成功し、実際、IgG4抗体を産生することをin vivoおよびin vitroで明らかにできたから、新規マウスの有用性を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度は、マウスIgG1の定常領域(Cgamma1)をヒトIgG4の定常領域と入れ替えたマウス(gamm1-hIgG4マウス)を樹立した。本マウスのB細胞分化を骨髄、脾臓、リンパ節、末梢血で検証したところ、正常なB細胞分化がみられた。ナイーブ(非免疫)の状態での血清抗体値を調べたところ、IgG4の抗体を検出できた。IgG1は野生型の約半分程度で予想通りの結果であった。ハプテン抗原で免疫後の、IgG4抗体産生を検証した結果、抗原特異的IgG4抗体の検出にも成功した。さらに、in vitroでクラススイッチを誘導する実験系においてもIgG4へスイッチしたB細胞を確認した。以上のことから、新規に作成したIgG4産生マウスはin vivoでのIgG4の役割を検証するための有用なツールになる可能性を示した。
今後は、昨年度に樹立したマウスを用いて、IgG4陽性B細胞サブセット(胚中心B細胞、記憶B細胞、プラズマ細胞)の局在、頻度、抗原特異性を検証する。さらに、抗原の違いによるIgG4抗体応答、親和性成熟ならびに記憶B細胞応答を検討する予定である。マウス Cgamma1をヒトCgamma4と入れ替えたマウスが先行して作成に成功したが、同時にマウス Cgamma3をヒトCgamma4と入れ替えたマウスも作成中であり、今年度に完成させる(gamma3-hIgG4マウス)。そして、gamma1-hIgG4マウスとgamma3-hIgG4マウスを用いて、アレルギー疾患への関与を検証する。
予想以上に研究が進展したため、想定外に備えて計画していた実験が不要になったため、次年度での細胞および遺伝子解析とモデル実験のための研究費に当てる予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件)
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