研究課題/領域番号 |
19K22545
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
横須賀 忠 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10359599)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント分子 / 副刺激受容体 / TIGIT / T細胞 / シグナル伝達分子 / イメージング |
研究実績の概要 |
受容体とリガンドとの結合では、Transの関係のみが注力される傾向にあるが、近年ではcisの結合も重要であり、複雑な生理機能を生むことが知られるようになった。最近報告され、腫瘍免疫における抗体療法でも効果が示されたPD-1とCD80のcis結合は、免疫チェックポイント阻害療法に新たな方向性を投じている。これまで我々が研究の対象としてきた受容体のシグナロソームも、このcis結合が酵素と基質を凝集させるための場として、シグナル伝達の惹起と強弱を制御する機能ユニットである。本研究では、免疫受容体の高さが受容体の細胞表面の分布を決定し、免疫細胞の活性化を担うシグナル伝達の単位「シグナルソーム」を制御するという、構造の違いから生理活性が決定される新たな概念の創出を目的とした。この仮説を証明するための研究対象として、第3のチェックポイント分子TIGITとCD96、またその競合活性化分子DNAM-1の高さの違いに注目し、CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)に発現しているこれらの分子がどのようにTCRからの活性化シグナルを制御しているか、分子の高さの違いから研究を遂行した。TIGIT、CD96、DNAM-1を可視化するため、超解像度顕微鏡と、リガンドであるCD155のGPIアンカーモチーフ型キメラ分子を導入した抗原提示可能な人工平面脂質二重膜との融合システムを構築し、1分子イメージングを行い、分子の高さを調節することでTIGITを中心としてた複数の活性化及び抑制性受容体とそのリガンドの制御機能を考察する。この高さと受容体の局在を制御し、効率的にCTLの活性化を制御することで、より優れた癌免疫療法開発の基盤を構築することが目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共焦点レーザー顕微鏡、超解像度全反射蛍光顕微鏡、およびCD155のGPIアンカーモチーフ型キメラ分子を導入した抗原提示人工平面脂質二重膜を用い、リガンドCD155の存在下におけるTIGIT、CD96、DNAM-1、TCRのシグナロソーム形成の相違点を描出した。このイメージングデータに基づき、モデルT細胞にそれぞれの受容体を発現させた実験系を新たに作成し、抗原ペプチドの量と親和性を変化させながら、CD155の発現量を変え、TIGIT、CD96によるDNAM-1の阻害効果、およびDMAN-1シグナルとTCRシグナルの抑制効果を生化学的側面とサイトカイン産生能、細胞傷害活性で評価した。その結果、CD155の結合阻害による抑制はDNAM-1を介して抑制的い働き、またDNAM-1の活性化型副刺激シグナルの抑制により間接的にTCRシグナルも低下していたが、直接的なTCRシグナルの脱リン酸化反応等を介した抑制は認められなかった。これは、TIGITの責任分子がSHIP1フォスターゼであり、PD-1-SHP2 axisのようにTCRシグナロソームの直接的脱リン鎖化反応ではなく、イノシトール系を介して間接的に機能していることが理由として挙げられた。また、TIGIT-CD155結合がない場合もSHIP1がベースとしてTCR/CD3複合体に会合する分子イメージングの結果が得られ、この既存の報告とは違う現象が原因と考えられた。この問題点を解消するためには、①TIGIT、CD96、DNMAM-1のCRISPR-Cas9法による本モデルT細胞から完全にnullの状態での実験系を再構築すること、②SHIP1の分子イメージングと生化学的解析を同じ実験系で検証すること、③TCR以外の抑制も標的にするため、NK受容体など細胞種を替えて検証すること、などが対応策と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画にて提案していた研究と並行して、①CRISPR-Cas9法を用いたTIGIT、CD96、DNMAM-1欠損モデルT細胞の作成、②超解像全反射顕微鏡N-SIM TRIFMを用いたSHIP1の1分子解析、③モデルNK細胞、特にNK細胞株NKLの実験系の確立を行う。また、キメラ抗原受容体CARを用いた同様の実験を計画する。モデルNK細胞にTIGIT、CD96、DNMAM-1および他の併行研究で確立した活性型NKじゅ様態2B4を発現させ、標的細胞A562との混合培養により産生されるサイトカイ産生および細胞障害活性によりTIGIT、CD96のtransおよびcis結合による活性化制御機構を検討する。超解像イメージングのために蛍光輝度を抑えたHaloTag標識したTIGIT、CD96、DNMAM-1、2B4、SHIP1、SLP-76、GRB2を新たに作成し、モデルT・NK細胞での1分子イメージングに対応できるかコンディショニングを行い、1分子挙動の情報を取得し、先行研究にて作成した輝点自動追跡プログラムで各分子の位置・時間情報を解析し、CD155の発現による変化を検討する。またそれらの下流の活性化シグナル伝達分子の評価は、ウエスタンブロットによる免疫沈降やフローサイトメトリーによる細胞内リン酸化タンパク質の検出および、RLuc発現標的細胞を用いた細胞障害活性測定にて行う。また、引き続き生体内でのDNAM-1、TIGIT、CD96各シグナロソームの腫瘍免疫における機能や次の免疫チェックポイント療法の可能性を検討するため、OVA特異的TCRトランスジェニックを用いた抗腫瘍効果を検討する。本年度の準備実験にてOVA発現EL-4がIVISによる腫瘍径測定にも対応でき、基礎実験でのバックグラウンドの低さから最適であることが分かっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国ベイラー医科大学との共同研究にて予定していた研究がパンデミックの影響で予定通りの進行ができず、計画の一部を持ち越した。実験計画としては、T細胞補助刺激受容体CARを含む第2世代のCARにデザイン化されている補助刺激受容体とTIGIT、DNAM-1、CD98の機能、またCARシグナルが直接的に活性化および抑制性制御を受けるか、超解像分子イメージングと生化学的および生理学的アウトプットを介して検討を行う。
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