研究課題
受容体とリガンドとの結合では、Transの関係のみが注力される傾向にあるが、近年ではcisの結合も重要であり、複雑な生理機能を生むことが知られるようになった。最近報告され、腫瘍免疫における抗体療法でも効果が示されたPD-1とCD80のcis結合は、免疫チェックポイント阻害療法に新たな方向性を投じている。これまで我々が研究の対象としてきた受容体のシグナロソームも、このcis結合が酵素と基質を凝集させるための場として、シグナル伝達の惹起と強弱を制御する機能ユニットである。本研究では、免疫受容体の高さが受容体の細胞表面の分布を決定し、免疫細胞の活性化を担うシグナル伝達の単位「シグナルソーム」を制御するという、構造の違いから生理活性が決定される新たな概念の創出を目的とした。この仮説を証明するための研究対象として、第3のチェックポイント分子TIGITとCD96、またその競合活性化分子DNAM-1の高さの違いに注目し、CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)に発現しているこれらの分子がどのようにTCRからの活性化シグナルを制御しているか、分子の高さの違いから研究を遂行した。TIGIT、CD96、DNAM-1を可視化するため、超解像度顕微鏡と、リガンドであるCD155のGPIアンカーモチーフ型キメラ分子を導入した抗原提示可能な人工平面脂質二重膜との融合システムを構築し、1分子イメージングを行い、分子の高さを調節することでTIGITを中心としてた複数の活性化及び抑制性受容体とそのリガンドの制御機能を考察する。この高さと受容体の局在を制御し、効率的にCTLの活性化を制御することで、より優れた癌免疫療法開発の基盤を構築することが目的である。
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