研究課題
がんは患者を死にいたらしめる重篤症状であり、その進展には腫瘍細胞と宿主の非腫瘍細胞間での相互作用が重要である。本研究では、応募者がショウジョウバエ腫瘍移植モデルを用いて見出した「腫瘍と宿主細胞・臓器間の相互作用」に注目して、宿主個体の局所および全身性応答を制御する分子メカニズムを体系的に明らかにするものである。宿主生体内での非腫瘍組織や細胞での遺伝子発現変化を網羅的に解析することで腫瘍の進展に関与する宿主側因子を見出す。さらに宿主因子が作用する組織や細胞での遺伝子操作を行い、機能解析を行う。これまでに、ショウジョウバエ成虫個体へ移植した、由来の異なる腫瘍を用いて、腫瘍移植後にみられる腫瘍サイズや個体致死の表現型を見出してきた。特に、上皮性の悪性腫瘍(RasV12/Scrib-/-)や脳由来の腫瘍(insc-Gal4>brat-RNAi)を移植して、腫瘍ごとに特徴的な腫瘍-宿主間相互作用を解析してきた。宿主の腸管周辺で過増殖する表現型は腫瘍の種類に限らず観察される一方で、脳由来の腫瘍は宿主内で広範囲に転移し、脳や胸部に播種して転移することを見出した。また、宿主個体における腸管組織や脳組織のRNA-seq解析を行うことで、腫瘍-宿主間相互作用の分子実体の候補を明らかにすることができた。さらに、宿主の組織特異的な遺伝学的操作によって、腫瘍の進展や転移を抑制する表現型を確認することができ、宿主個体の操作による腫瘍制御に対して示唆を得ることができた。
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