研究課題
がんの転移・浸潤・薬剤耐性などの悪性化には腫瘍微小環境が重要な役割を果たす。本研究では、グルタミン欠乏を基軸としたがん細胞のアミノ酸欠乏のアダプティブセンサーの探索から新規がんの治療法の開発につながる研究を目的として研究を行った。(1)「グルタミンを基軸としたアミノ酸欠欠乏センサーの探索」:近年、がん細胞はロイシンなどの必須アミノ酸欠乏をmTOR複合体を介したシグナル伝達系で感知することが知られている。一方、その他アミノ酸欠乏の感知機構は未だ不明な点が多い。本研究は、独自の低栄養培地に各アミノ酸のみを添加した培地を作成し各アミノ酸存在下で、がん細胞を培養した結果、各アミノ酸で特異的に発現誘導される遺伝子群や代謝物候補を同定し、パスウェイ解析を用いて各アミノ酸における上流転写因子を同定した。また、申請者はグルタミンで誘導され、ロイシンやその他のアミノ酸では変動しない遺伝子群を見出した。さらに、申請者らは、グルタミンで特異的なヒストン修飾(H3K4me3, H3K27ac)を解析し、プロモーター、エンハンサーの規定し、クロマチン相互作用のデータとの統合解析から、上流転写因子やアミノ酸トランスポーターなどのアミノ酸欠乏で必須となるセンサー分子を同定を試み、グルタミンで特異的に発現誘導するアミノ酸トランスポーター(SLCタンパク質群)を同定した。(2)「グルタミンを基軸としたアミノ酸欠乏に対するアダプティブ機構の解明」:本研究では、グルタミン欠乏を基軸とロイシン欠乏を比較し、がん細胞の新規アミノ酸欠乏アダプティブ機構が存在する可能性を見出した。本研究により、がん悪性化を促進する新しいアミノ酸欠乏の感知・適応システムやアミノ酸代謝異常に関わる代謝経路や遺伝子変動の解明が可能となり、今後、新規がん治療法への応用が期待できる。
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eLife
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Journal of Biological Chemistry
Cancer Science
J. Am. Chem. Soc
巻: 143 ページ: 3340-2247