研究課題
前立腺がんの15~20%において起こるとされる染色体13番長腕RB遺伝子領域の欠失は、アンドロゲン受容体経路の亢進により去勢抵抗性獲得に繋がる。ところが、RB遺伝子領域の欠失は、逆に前立腺がんのアキレス腱ともなる。RB遺伝子の近傍に位置するSUCLA2が、RB遺伝子領域の欠失に極めて頻繁に巻き込まれる。このようながん特異的なゲノム異常を標的とすれば、スペクトルが絞られ、副作用の無いがん治療薬の開発が可能になるかも知れない。本研究では、SUCLA2欠失と合成致死性になる遺伝子を探索、また、ケミカルライブラリースクリーニングを行い、SUCLA2欠失細胞を特異的に傷害する化合物を探索した。さらに、SUCLA2欠失腫瘍のバイオマーカーとして血中メチルマロン酸濃度を測定する系の確立を目指した。代謝遺伝子約3,000種類をカバーするCRISPR-CAS9ライブラリーによるドロップアウトスクリーニングを複数のSUCLA2欠失株において遂行したが、これらの遺伝子中には合成致死性を示すものを見出さなかった。しかし、SUCLA2欠失前立腺がんを特異的に抑制する化合物のスクリーニングを行い、2種のリード化合物を得た。うち一種について特許出願を完了した。この化合物は、その欠失がRB1欠失と合成致死性を示す遺伝子産物に対する阻害剤と相乗的な殺細胞効果を発揮した。これらの知見を論文として発表した。SUCLA2欠失腫瘍のバイオマーカーとして血中メチルマロン酸濃度をGC/MSを用いて測定する系を確立した。なおこの研究開発はAMED次世代がんに採択されたので、今後は、AMEDの様々な支援の元、更なる研究開発を目指す。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Onco
巻: 1 ページ: 1-2
10.3390/onco1010001
Cancer Sci.
巻: 111 ページ: 2336-2348
10.1111/cas.14492
Oncogene
巻: 39 ページ: 5690-5707
10.1038/s41388-020-1381-6
Science Advances
巻: 6:1 ページ: eaay2432
10.1126/sciadv.aay2432
FEBS Open Bio
巻: 10 ページ: 1967-1984
10.1002/2211-5463.12947
Sci. Rep
巻: 11 ページ: 1666
10.1038/s41598-021-81076-z
https://omb.w3.kanazawa-u.ac.jp
http://ganken.cri.kanazawa-u.ac.jp