研究課題/領域番号 |
19K22559
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
北川 雅敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50294971)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 相同組換え / 性差 / 相同組換え修復 / 女性腫瘍 / ES細胞 |
研究実績の概要 |
我々はジーンターゲッティングによるKOマウス作成の数多くの経験から、メスES細胞はオスに比べて相同組み換え(HR)の効率が極端に低いことに気づいた。ES細胞に6番染色体ROSA26領域に相同組換えにて遺伝子を挿入すると、オスのES細胞は10%程度の高効率で目的のHR体が得られるが、メスのES細胞でのHRの成功率はオスES細胞に比べて明らかに低かった。しかしながらこの現象はESのバックグラウンドの違いによる可能性がある。それを否定するために、我々は同じマウスペアから同一バックグラウンドのオス/メスのES細胞を各3クローン樹立することに成功した。そのES細胞を用いて、カンプトテシン(CPT)によるDNA傷害を相同組換え修復(HRR: homologous recombination repair)で修復する能力を評価するclonogenic assayで検証した。その結果、メスのES細胞はオスES細胞に比べて有意にCPTに対して死に易く、相同組換え修復能が低いためDNA損傷を修復できにくいことが示唆された。さらに相同組換え能を直接測るため、Nanog-GFPをオス/メスのES細胞にトランスフェクトしてNanog-遺伝子座にノックインされGFPが発現している細胞の数を比較した(HR assay)。その結果、メスのES細胞はオスES細胞に比べて有意に、Nanog-遺伝子座にノックインされGFPが発現している細胞数が少ないことが判明した。以上よりメスのES細胞はオスES細胞に比べて相同組換え能が低いことが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の結果を得たことにより概ね順調に推移していると判断した。 1.同じマウスペアから同一バックグラウンドのオス/メスのES細胞を各3クローン樹立することに成功した。 2.clonogenic assayで検証した結果、メスのES細胞はオスES細胞に比べて有意にCPTに対して死に易いことがわかり、相同組換え修復能が低いためDNA損傷を修復できにくいことが示唆された。 3.Nanog-GFPを用いた解析で、メスのES細胞はオスES細胞に比べて相同組換え能が低いことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今回のオス/メスのES細胞を用いた、clonogenic assayおよびHR assayの結果は、メスのES細胞はオスES細胞に比べて相同組換え能が低いこと示唆するものである。さらにそれを検証するため、Dox-inducible-Xistを導入したES細胞3クローンを樹立して、Dox(+)でX染色体を不活化した時の影響をclonogenic assayおよびHR assayで検証する。また、Dox-inducible-Xist ES細胞を用いて、Dox(+/-)でXaXiとXaXaにおける発現遺伝子の解析をRNA-Seqにより行い、X染色体活性化状態の違いによる相同組換え能低下の原因となる遺伝子を同定する。一方で、オス/メスのES細胞を用いてRNA-Seqで発現している遺伝子の違いを解析し、メスで相同組換え能が低い原因となる遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度ではDox-inducible-Xistを導入したES細胞の樹立を試みたが、1クローンしか樹立できなかった。それによりRNA-Seq(外注)による発現遺伝子の解析が延期された為、次年度使用額が生じた。2020年度でさらにDox-inducible-Xist ES細胞クローンの樹立を行う。3クローン以上のDox-inducible-Xistを導入したES細胞を用いて、Dox(+/-)でXaXiとXaXaにおける発現遺伝子の解析をRNA-Seqにより行い、X染色体活性化状態の違いによる相同組換え能低下の原因となる遺伝子を同定する。
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