研究課題
エストロゲン(以下、E2と略す)曝露時に生じるゲノム切断は、エストロゲン受容体(以下、ERと略す)依存的に活性化されるエンハンサー、数千箇所において生じることを示唆するデータを得た。我々は、2019年度までに、BRCA1/2が相同組換えとは異なる経路でゲノム切断修復を行うことを見出した。その経路は、DNA topoisomerase II (TOP2)が作るゲノム切断を修復する。TOP2は、DNAの切断と再結合を高速で繰返す酵素であり、ホルモン刺激時に標的遺伝子のプロモーターとエンハンサーで活発に触媒反応すると推定されている。TOP2は生理的条件で時々再結合に失敗し、切断の5'端にTOP2が共有結合する「難治性」切断を作る。エトポシド(抗癌剤)も難治性切断を作る。この難治性切断の修復を非相同末端結合経路がする。2019年度までの業績は、この再結合の前にBRCA1が切断端からTOP2を剥取るのを発見したことである(PNAS USA, 2018; iScience 2020に発表)。2020(R2)年度には、以下のデータを得た。我々が使った手法はNET-CAGE(Nature Genet. 2019)と呼ばれるトランスクリプトーム解析手法である。これは、ホルモン刺激時に一過性に活性化されるエンハンサーを網羅的に検出できる唯一の手法である。検出の手法は、エンハンサー部位から転写されるエンハンサーRNA(eRNA)の定量である。我々は、非相同末端結合やBRCA1が欠損すると、千以上のER標的遺伝子のE2依存的発現が異常になり、多くのエンハンサーから作られるeRNAの発現がE2曝露時に異常に増加することを見出した。以上の結果からERとTOP2の両方に依存するゲノム切断のホットスポットはエンハンサーであり、切断がすぐに再結合しないとホルモン応答時の転写に異常が起こると結論した。
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