研究課題/領域番号 |
19K22562
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内藤 尚道 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (30570676)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍血管内皮細胞 / 一細胞遺伝子発現解析 / 内皮細胞多様性 / 血管新生 / 内皮幹細胞 |
研究実績の概要 |
腫瘍が増大するためには腫瘍自身を栄養する血管の新生が必要であり、腫瘍血管の内皮細胞を標的とした薬剤が開発され臨床応用されている。しかし、既存の血管新生阻害剤に対して耐性を示す腫瘍が多く存在することから、新たな治療標的の探索が課題となっている。これまでに血管内皮細胞には増殖能が高く幹細胞様の性質を持つ特殊な内皮細胞が存在し、治療抵抗性の原因となることを解明してきた。しかしこの特殊な内皮細胞の特徴は十分にわかっていない。本研究では最先端の細胞解析技術である一細胞遺伝子発現解析を用いて、網羅的に腫瘍血管内皮細胞を解析し、新たな内皮細胞分類を確立する。そして幹細胞様の内皮細胞を含め、各内皮細胞分画の遺伝子発現パターンを詳細に解析する事で、新規の治療標的の同定と治療方法の開発を目指す。 2019年度は腫瘍の解析を行うにあたり比較対象として用いる複数の正常臓器で、血管内皮細胞の一細胞遺伝子発現解析を実施した。これまで血管内皮細胞はすべて均一であると考えられていたが、本解析の結果から、正常臓器では血管内皮細胞は動脈、静脈、毛細血管内皮細胞を含む複数の集団に分画できる事が明らかとなった。さらにマウス皮下腫瘍モデルから腫瘍血管内皮細胞を分離して一細胞遺伝子発現解析を実施した。腫瘍血管内皮細胞も複数の分画に分類できたが、正常臓器の分類様式とは異なっていた。新たに分類した腫瘍血管内皮細胞の各分画の遺伝子発現情報を解析すると、盛んに細胞分裂をしている可能性が考えられる分画が存在していた。本分画にはこれまでに報告してきた増殖能が高い特殊な内皮細胞を含んでいる可能性があり重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は計画通り正常臓器と腫瘍の血管内皮細胞の一細胞遺伝子発現解析を実施した。またそのデータ解析も順調に進み、正常臓器の内皮細胞の分類と腫瘍血管内皮細胞の分類を実施した。各分画の遺伝子発現情報も得られており、各分画に特異的に発現している遺伝子の機能解析を行なっている。これらの結果から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に同定した各分画の遺伝子発現情報をもとに、内皮細胞株および腫瘍由来内皮細胞を用いて、shRNAを用いた遺伝子発現のノックダウン、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子ノックアウト、薬剤を利用した阻害実験あるいは強制発現を実施し、内皮細胞の増殖、運動、血管形性に対する影響を解析し、個々の候補遺伝子の機能を明らかにする。また血管内皮細胞における機能が未知である遺伝子に関しては、ノックアウトマウスを作製して生体内での機能解析を行う。
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