カベオラとは、細胞膜に存在する直径約100nmのフラスコ状の窪みであり、CAV1を骨格とした構造物であるとともに、コレステロールやスフィンゴ脂質に富み、エンドソーム(小胞)を形成する。人工的に精製したカベオラから生まれる小胞は、従来の合成ミセル等に代表される試験管内での再構築系に比べ、安く大量に作ることができることから、精製したカプセル剤を医学的に応用できると考える。そこで本研究では、カベオラ形成因子として新たに見出したROR1分子によるカベオラ依存的な人工的小胞の作製と、その小胞を利用した薬剤伝達法の開発に向けた科学的基盤の構築を目的としている。 これまでの研究から、大腸菌やヒト細胞において検証済みの癌化に寄与しない必要最低限の部分的ROR1蛋白質とともに、カベオラ構成分子であるCAV1、CAVIN1蛋白質を発現させ、in vitro再構築系を立ち上げ、CAV1やCAVIN1の結合力など生化学的解析に加え、ROR1、CAV1、CAVIN1の発現・局在について蛋白質の細胞内局在に関してスクロース濃度勾配遠心法による解析を行ってきた。しかしながら、宿主細胞の状態やタンパク質の発現程度、安定性など改善点が見出され、これらの生化学的な検証に時間と労力を要するとともに、各々の精製タンパク質の性状解析を中心に研究を進めた。
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