研究課題
がん細胞での遺伝子の増幅はがん化や抗がん剤耐性の原因となる遺伝子異常である。我々が樹立したMGEM6細胞は核酸代謝酵素ribonucleotide reductase M1遺伝子の増幅が抗がん剤ゲムシタビンの耐性の原因となっていた。抗生物質ドキシサイクリン(DOX)存在下でBHLHE41を発現誘導可能なMGEM6/BHLHE41細胞を作成し、この細胞はDOX存在下4週目に再現よくRRM1のコピー数が減少した。BHLHE41には増加した遺伝子のコピー数を抑制する機能があることが推測された。DOX 処理前後のMGEM6/BHLHE41細胞のゲノムDNAについて従来よりも長いDNA(最大200kb以上)を一度に解析可能な次世代シークエンサーPacBioを用いて全ゲノム遺伝子の配列を解析し、あわせてトランスポゼースを用いたゲノムDNAの構造の解析を行った。その結果、MGEM6/BHLHE41細胞のRRM1ゲノム領域での遺伝子コピー数が増加とDOX処理による減少を確認し、さらに詳細は解析を行っている。通常DNA損傷によりTP53たんぱく質の安定化に伴ってBAX遺伝子が発現するとアポトーシスを誘導される。しかし、野生型TP53を持つ肺腺がん細胞株でBHLHE41を発現誘導するとオートファジー細胞死が起こり、この時TP53たんぱく質は上昇し、BAXのmRNAとたんぱく質の発現が減少していた。クロマチン免疫沈降とレポーターアッセイなどを行って、BAX遺伝子の5’非翻訳領域のがん遺伝子MYCの結合領域にBLHLE41が結合して、BAXの発現を阻害し、MYCの複数のターゲット分子CCNA2, DDX18, LDHA, ODC1, PTMA, CDK4のmRNAの発現を阻害した。以上からBHLHE41がMYCの転写活性機能を阻害すると考えられた。
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