研究課題
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、進行がんにも劇的な抗腫瘍効果をもたらす一方で効果が期待される患者は限定的であり、治療応答性の規定因子の解明が喫緊の課題である。申請者は、あるがん腫では腫瘍内部に血小板が侵入し、がん細胞の増殖や上皮間葉転換などに寄与することを報告してきた。本研究では、腫瘍内血小板が免疫細胞の不活性化に寄与する可能性を検証し、ICIと抗血小板薬もしくは応募者が樹立済みの血小板中和抗体との併用療法の有効性を検討することを目的とする。2019年度は、血小板活性化能が亢進したがん細胞株の樹立を行い、腫瘍内血小板集積の亢進ががん免疫微小環境に与える影響について解析した。PDPNは、血小板表面のCLEC-2受容体と結合することで血小板活性化を誘導するI型膜貫通タンパク質であり、がん細胞におけるPDPNの発現は腫瘍内部への血小板の集積をもたらすことを研究代表者は報告している。そこで、マウス大腸がんMC-38細胞にPDPNを過剰発現させた細胞株を樹立し、マウス背部皮下に移植したところ、PDPN発現は腫瘍増殖の亢進に寄与することが明らかとなった。また、腫瘍内部の免疫細胞の変化をフローサイトメトリー法や免疫組織化学染色法で解析した結果、PDPN発現腫瘍では腫瘍内部における血小板凝集塊の集積が亢進するとともに、ある種の免疫細胞の存在比に変化が生じていることが確認された。現在、この免疫細胞が腫瘍増殖の亢進に寄与する可能性を検証している。
2: おおむね順調に進展している
血小板活性化能が亢進したがん細胞株の樹立に成功し、樹立した細胞をマウスに移植すると腫瘍増殖が亢進することを新たに見出し、その腫瘍内部ではがん免疫微小環境に変化が生じていることを明らかにすることができた。次年度にはICIの治療効果を評価する体制構築ができており、おおむね順調に進展している。
今後は、腫瘍内血小板がICIの治療効果に与える影響を評価し、ICIと抗血小板薬もしくは応募者が樹立済みの血小板中和抗体との併用療法の有効性を検討する。
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