研究課題/領域番号 |
19K22573
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
片岡 圭亮 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90631383)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 免疫 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
近年、様々ながん免疫を標的とする薬剤が開発されているが、それらの標的となる細胞集団や分子学的特徴は十分に明らかではない。最近、申請者は10X Genomics技術を応用して、多数の表面マーカー解析と網羅的トランスクリプトーム解析・レパトア解析を単一細胞レベルで同時に実現できる技術を開発した(CITE-seq)。本研究では、この新規単一細胞解析技術を用いて、マウス腫瘍モデルに対してがん免疫を標的とする薬剤を投与した際のがん免疫微小環境に与える影響の網羅的な解析を試みる。さらに、抗PD-1・CTLA-4・LAG-3抗体などの様々な薬剤やその併用を試すことにより、それぞれの類似点や相違点を明らかにし、最適な組み合わせを同定する。さらに、ネオアンチゲン由来ペプチドとMHC分子の複合体の多量体を用いて同様の解析を実施し、ネオアンチゲン特異的T細胞を単一細胞レベルで解析することを目指す。 本年度は、マウス腫瘍モデルにおける免疫チェックポイント阻害剤の効果評価系の構築を行った。まず、がん免疫のマウス腫瘍モデルの頻繁に用いられているMC38またはCT26マウス大腸癌細胞株を同系マウスに皮下移植し、抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗4-1BBアゴニスト抗体、あるいは、その組み合わせを投与して、コントロール抗体と比較した。腫瘍径、CD4およびCD8陽性T細胞の割合などの評価を行い、最適なな実験条件を決定することが出来た。 さらに、ネオアンチゲン・MHC複合体マルチマーを用いた腫瘍特異的T細胞の単一細胞解析を行った。抗原を含むペプチドとMHCの複合体マルチマーを作成し、上記の実験系において腫瘍抗原特異的なT細胞を検出可能か検討したが、このような細胞は少数であり、シングルセル解析では検出困難なことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元々、予定した実験は順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、新規単一細胞解析技術を用いたマウス腫瘍モデルにおける免疫チェックポイント阻害剤の効果の検証:腫瘍組織から浸潤した免疫担当細胞を分離し、骨髄系、T細胞系、B細胞系などに特徴的な表面マーカーを認識する30~40種類のオリゴヌクレオチドを結合させた抗体で染色した後、10X Genomicsの単一細胞トランスクリプトーム解析およびB細胞やT細胞に対する単一細胞レパトア解析によりライブラリ作成を行い、次世代シーケンサーにより解読する(CITE-seq)。得られたデータはCellrangerアルゴリズムによりマッピング、遺伝子発現カウント、B・T細胞受容体カウントを行った後に、遺伝子発現、表面マーカー、および、レパトア解析を実施する(既に本解析パイプラインも作成済み)。特に、免疫チェックポイント阻害剤により変化する細胞集団を同定し、同一の単一細胞で遺伝子発現や表面マーカー、B・T細胞受容体多様性を評価することで、分子レベルでの特徴を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のために、一部の物品の納品が遅れたため。
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