研究課題
近年、様々ながん免疫を標的とする薬剤が開発されているが、それらの標的となる細胞集団や分子学的特徴は十分に明らかではない。最近、申請者は10XGenomics技術を応用して、多数の表面マーカー解析と網羅的トランスクリプトーム解析・レパトア解析を単一細胞レベルで同時に実現できる技術を開発した(CITE-seq)。本研究では、この新規単一細胞解析技術を用いて、マウス腫瘍モデルに対してがん免疫を標的とする薬剤を投与した際のがん免疫微小環境に与える影響の網羅的な解析を試みる。昨年度の検討により、ネオアンチゲン・MHC複合体マルチマーの検出はシングルセル解析では困難なことが判明したため、本年度は、マウス腫瘍モデルにおける各免疫チェックポイントを標的とした場合の微小環境の変化をCITE-seqで解析することに焦点を当てた。まず、マウス腫瘍モデルであるA20やMC38などの細胞株を用いて検討し、これらの細胞株にPD-L1を始めとする複数の免疫チェックポイントが発現していることを確認した。さらに、各免疫チェックポイントを標的とした場合に微小環境の変化をフローサイトメトリーや病理学的検索、およびCITE-seqで評価した結果、CD8 T細胞の割合や表現型の変化が確認されただけでなく、それ以外の様々な免疫微小環境に存在する細胞や分子の変化を起こしていることが見出された。さらに、同じ細胞株を用いて一部の免疫チェックポイントを遺伝学的に高発現させた場合に、各免疫チェックポイントを標的とした場合と逆の変化が観察された。現在、この一部の変化の生物学的意義を検証中である。これらの結果は、CITE-seqなどによるシングルセル解析ががん微小環境の強力な解析ツールであることを示唆している。
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