エクソソームには様々な蛋白質、脂質、mRNA・miRNAが含まれているが、これらの分子の構成は、細胞の種類や状況により大きく異なり、標的細胞の応答を正にも負にも制御しうる。実際我々は以前、刺激した神経細胞が分泌するエクソソームがミクログリアを活性化し、シナプスの刈り込みを促進することを報告した。そこで私達はマウス初代神経細胞にイノシトール三リン酸によるCa2+刺激を与えた後に、エクソソーム上に発現が誘導される分子を22種同定し、その中に睡眠障害や神経・免疫・代謝などの制御に関連するファミリー分子2種を同定した。両者は神経細胞特異的な膜蛋白質で、特に視床下部に強く発現している。両者のFc融合蛋白質を作製し、初代アストロサイトやミクログリアへ作用させたところ、Cxcl3やIL-1βなどのケモカイン・炎症性サイトカインの発現を強く誘導するとともに、マウス脳内への投与で白血球遊走やミクログリア活性化を引き起こすことを見出した。一方、これらの分子のノックアウトマウスを作製し、脳内炎症を惹起したところ、強い抵抗性を示すことを見出した。更に、我々は脳神経細胞由来エクソソームが血液・脳関門を通り抜け末梢血内にも検出されることを実験的に証明しており、血中エクソソームの一部に本同定分子が発現していることも確認した。このことから、これらの分子を介して末梢の免疫や代謝の機能を制御する可能性があり、それがどのように制御されるか今後更なる解明が期待される。
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