研究課題/領域番号 |
19K22579
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浦山 慎一 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (10270729)
|
研究分担者 |
藤本 晃司 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (10580110)
尾上 浩隆 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (80214196)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | MRI / phased-array coil / 高インピーダンスコイル技術 / 脳イメージング |
研究実績の概要 |
ヒトの脳高次機能を明らかにするためには、ヒトに近い非ヒト霊長類であるサルを用いた比較研究が重要であり、MR画像技術が非常に有用なツールとなっている。本研究では、ヒトに比べ小さいサルの脳において同等のMRI画像を得るために、近年ニューヨーク大学で開発された高インピーダンスRFコイル技術を用い、より脳に近接させることが可能なphased arrayコイルを開発、霊長類のin-vivo/ex-vivo MRI脳イメージングにおいて、信号ノイズ比の飛躍的な向上を目指す。 初年度ではまず、ループコイルの径をどの程度変化させる事が出来るかを調査した。高インピーダンスコイル技術においては、ループコイルの長さが使用する同軸ケーブルのインピーダンスと周波数から決まると言われているため、インピーダンスの異なる同軸ケーブルを複数用い、コイル径がどの程度変えられるか調べた。しかし、ケーブルの太さや柔軟さ、効率、絶縁体の耐熱性等から来る制限を考えると、選択出来るケーブルの種類は非常に限られており、ループ径としても数10%程度の範囲内でしか変えられないことが判明した。 また共振回路の小型化と強度の向上も試みた。高インピーダンスコイルでは、ループに直接共振回路が接続されるため、撮像対象に合わせてコイルの位置関係を調整するときに、共振回路が干渉したり、破損したりする恐れがある。そのため、共振回路を3次元化して小型化すると共に、最も脆弱性が懸念されるケーブルと基盤の接続部位に無理な応力がかからない様にした。 最後に、これらの開発結果を基に、8chのマカク頭部用phased array高インピーダンスコイルの設計、開発を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、米ニューヨーク大学に所属していたDr.Martijn Cloosとの共同研究であり、非常に高価なMRI装置を用いた実験は、豊富な経験を有するDr.Cloosを招聘し共に行う予定であった。しかしながら、2019年末にDr.Cloosがニューヨーク大学から豪クィーンズランド大学に異動となる等の個人的理由が生じ、また年明け後には新型コロナウィルスによる渡航自粛、禁止などの制約があったためにDr.Cloosの招聘ができず、MRI実機での実験が出来ず、開発に制限が生じてしまったため。
|
今後の研究の推進方策 |
2年度目はまず、初年度に開発を開始した8chのマカク頭部用phased array高インピーダンスコイルのプロトタイプ機を完成させ、ファントム撮像実験を通して問題点を確認しながら改良、実用化を目指す。また、チャンネル数を8chから16chに増強し、ファントム実験、in-vivo実験を通してその有用性を評価する。 次に、サイズ可変型・防水加工標本用高インピーダンスコイルの開発に着手する。一般的に脳標本MR撮像では、標本のサイズが多様であるのに対しコイルは決められているため、標本とコイルに距離ができ信号ノイズ比が低くなる。そこで高インピーダンスコイル技術を用い、標本サイズにあわせてコイルのチャンネル数や配置を自由に変えられるようにする。また回路部分などを樹脂などで覆い防水加工を施すことにより、標本に直接コイルを巻き付けて容器の中の溶液に入れることを可能にし、ex-vivo実験により信号ノイズ比向上を確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、ニューヨーク大学のDr.Martijn Cloos(2020年1月に豪クイーンズランド大学に異動)との共同研究であるが、今年度、彼を複数回、招聘するよう予定していたにもかかわらず、彼の異動や新型コロナウイルスによる渡航自粛、禁止などにより招聘することが出来なかった。またそれに伴い、MRI装置を用いた実験が出来ず、それにより購入予定だった物品を選定出来なくなった。これらのため、招聘旅費、MRI使用料、物品購入費の使用が次年度に延期されることとなった。
|