研究課題
無限増殖能を有するがん細胞に対して、永続的に細胞周期を停止させる、すなわち老化させることは有効な治療戦略と考えられる。一方で、周囲の間質やがん細胞に対して、老化細胞はがん化や増殖刺激を与えるようなサイトカインや増殖因子を産生・放出するという老化関連分泌現象(SASP)を通して、再発や転移の引き金となる危険性を秘めている。従って、老化誘導をがん治療戦略にするには、事前に対象となるがんの治療感受性や、治療開始後の早期の応答予測を可能にすることが必要である。2020年度では、in vitroで放射線増感作用が確認されたId-1阻害剤であるpimozideをin vivoでマウス乳がん細胞を移植したマウスに投与することで、放射線で起こる細胞老化を増強できるかを調べた。その結果、pimozideとX線照射を併用した腫瘍において、明らかなSA-βGal染色陽性の老化細胞が確認できた。イメージングによる老化細胞を検出を質量分析イメージングで試みたが、老化誘導の程度が低いことから、はっきりとした代謝物変化が認められず、より顕著な変化を伴うモデルの作成および分析条件の修正が課題として残った。一方で、核医学プローブである18F-FDGおよび18F-FLTのオートラジオグラフィーによる集積分布解析を行ったところ、老化細胞が存在する部位は18F-FDGとは相関がなく、18F-FLT集積部位と正の相関があることが分かった。以上の結果から、老化細胞の検出に、18F-FLTのPETイメージングが有効である可能性が示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of clinical biochemistry and nutrition
巻: 67 ページ: 240-247
10.3164/jcbn.19-80