研究課題
我々は、FFIにおける表現型の違いが2つのプリオンによって引き起こされ、同じ2つのプリオンが視床型CJDでも見られることで、この研究申請を行った。1つ目のプリオンは、視床型CJDとFFIの従来からM2Tプリオンとして認められていたプリオンで、Ki-ChM(キメラ型ノックインマウス)に感受性があり、我々の開発したPMCA(試験管内増幅法)で増幅することができる。今回新しく認めたプリオンは、皮質を主に侵し病理的には典型的なspongiform changesを示し、タイプ2の分子量で、Ki-ChMには感受性がなく、Ki-bank(西洋ヤチネズミ)に感受性を示すという全く新しいもので、PMCAでは増幅不可能であった。この新しいプリオンは、視床型CJDに限らず広く孤発性CJDで認められるという当初予想もしなかった研究の進展が見られ、皮質型CJDとして分類するのが適当であると結論し、MM2C(sv, small vacuolation)と分類し、従来からのMM2CはMM2C(lv, large vacuolation)と再分類し、この分類をBrain Communicationsに報告した。我々の申請は、当初視床型CJDの新分類の提唱という内容であったが、この新しいプリオンは、もっと広く見られるものであり、皮質型CJDの中に分類することを提唱した。今後は、このプリオンがどの程度広く認められるのか、他のプリオンとの感染性の違いをさらに検討してゆく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、本年度の実績報告でも記載したように、当初予想もしなかった展開をみせている。M2プリオンに属する皮質型CJDの中で、新しいプリオンとして紹介したが、どれだけ広く存在するのか全く不明であり、孤発性CJDの中でのトピックスとして検討されるようになろう。このように、本研究は当初の計画を遥かに超えて進展中である。
M2C(sv)プリオンは、ウエスタンブロットではタイプ2に属し、免疫染色ではシナプス型の異常プリオン蛋白の蓄積を認め、病理的には典型的なspongiform changesを呈するプリオンである。現時点では、Ki-Bankのみに感染し、全てのヒト野生型のノックインマウスやキメラ型にも感染は成立しない。これらの特徴をもとに、孤発性CJDの中で、どの程度M2C(sv)が存在するのかを検討する予定である。もう1つの検討として、従来のM2CであるM2C(lv)の感染性とM2C(sv)の感染性が異なるのかを検討する予定である。現時点では、両方ともKi-bank にのみ感染する。特に、今後感染実験を予定しているのは、M232R変異を導入したKi-232R/Rマウスを用いた感染実験である。また、新しい試みとして、試験管内増幅法であるPMCAで両者に差が出てくるのかを検討する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 4件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 2件)
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