研究課題
2019年度に、予定前倒しでFFPEプロテオミクスの手法を確立することができたため、2020年度は、先ず、本手法を用いて網羅的にタンパク質群の病態変動を正確に定量可能か否かを検証することとした。従来、FFPEを用いて網羅的に定量しようとしても、生体内で起きている各タンパク質の発現量の変動を定量することは困難であった。FFPE利用の最大の利点は大勢の疾患患者のあらゆる病態組織を対象とできることであるが、上述の課題がこのFFPEの利用価値を下げていた。我々が確立したFFPEプロテオミクス手法を用いてこの課題を克服できるか否かを検証するために、胆汁うっ滞肝臓および正常肝臓に本手法を適用した結果、従来のFFPEプロテオミクス手法では全く新鮮組織のタンパク質病態変動量を反映した定量結果を得ることができなかったが、我々の手法では、新鮮組織で得られたタンパク質群の病態変動量を網羅的かつ高精度に追うことができ、はじめてFFPE組織を用いて網羅的にタンパク質の病態変動を定量できる手法を確立でき、論文発表できた。さらに、本研究で構築した手法をFFPE検体に適用して、最適と予測される薬剤が実際に有効であることを示すことによって、個別化治療の診断基盤として本法が有用であることを実証した。前立腺癌をモデルとして、最新の治療薬Enzalutamideに耐性を示す3種の前立腺癌細胞の細胞塊を用いてFFPE試料を作製し、測定される網羅的な蛋白質発現量データからパスウェイ解析で活性化パスウェイを絞り込んだ。それに対する阻害薬を、生きた該当細胞に暴露し、増殖阻害濃度(GI50)を測定し、Enzalutamideよりも効果的あることを示した。以上、本研究では、病態組織における分子機構を網羅的かつ高精度に定量可能なFFPEプロテオミクスを開発し、臨床診断を行う上での基盤を構築することができた。
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