人類遺伝学的所見や各種脳画像所見は、シナプスの障害による神経回路の変容が精神疾患の重要な病態生理であることを支持している。また本症の死後脳所見やモデルマウスにおいてもシナプス密度の減少が度々追試され、シナプス障害を緩和するという新規の戦略の有用性が示唆され始めている。一方で、このような治療戦略に立脚した創薬は行われていないため、本申請では96穴プレート上でハイスループットにシナプス密度を定量し、シナプス保護効果を有する“ヒット化合物”をスクリーニングした。病態モデルとしてはフェンサイクリジン(PCP)投与モデルを、ライブラリーは東京大学創薬機構の既知活性物質ライブラリー(1280化合物)を用い、ヒット化合物群のパスウェイ解析を併用する事により、より効率的な標的シグナル経路を見出す。単一分子に焦点を絞るのではなく、Cell-basedな表現型(シナプトパチー)に着目した新規創薬標的の探索に挑戦し、複数の有力な化合物を同定した。今後は、PCP慢性投与モデルマウスにこれらの低分子化合物を生体投与し、シナプトパチーや行動変容を正常化できるかを検討する。投与によるシナプスこのような手法で得られた知見は、手詰まり感を見せる精神疾患創薬に対する一つのブレークスルーになる可能性を秘める。
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