研究課題/領域番号 |
19K22592
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉江 淳 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (50777000)
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研究分担者 |
鈴木 マリ 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主任研究員 (20455405)
永井 義隆 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (60335354)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 伝播 / ショウジョウバエ / シヌクレイノパチー / 凝集 / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
パーキンソン病やレビー小体型認知症など進行性の神経変性疾患は年齢依存的に罹患率が増加する。超高齢社会を迎える我が国において、これら疾患の克服は喫緊の課題である。病態が進行する可能性の1つとして、疾患原因タンパク質αシヌクレインの異常構造転換・凝集により伝播性を獲得し、神経細胞間の繋ぎ目の役割を果たすシナプスを介して脳内で拡がるという仮説が提唱されている。ところが、既知の神経細胞間情報・物質伝達機構である化学シナプスおよび電気シナプスでは、病態がシナプス間を移動することが説明できず、未知のシナプス間輸送機構が存在することが示唆されている。しかしながら、現時点では非侵襲的にin vivoで伝播の病態を模すことができるモデルが存在しない。本研究は、これまでに発見するのが困難であった伝播のマスター遺伝子を同定することを目的とする。そこで私たちは、シンプルな神経回路を持つショウジョウバエ脳を用いて異常タンパク質の伝播の分子メカニズムの解明に取り組んだ。これまでに、細胞間伝播に関わる分子として、オートファジーのイニシエーションに必要なAtg1を同定した。その他のオートファジー関連因子を調べるたところ、細胞間伝播には関与しなかった。すなわち、オートファジーとは独立したAtg1の機能喪失により伝播現象が見られる可能性が示唆された。さらに、Atg1のノックダウンによって、原因因子αシヌクレインの凝集を細胞内に取り込む可能性を見出している。今後もこの伝播モデルを用い、細胞内で形成されたフィブリルが伝播するために必須な分子基盤を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエ脳を用いて異常タンパク質の伝播に必要なマスター遺伝子を特定するのが目的であり、これまでにオートファジー関連因子Atg1がαシヌクレインの凝集および細胞外放出の鍵となることを発見している。さらにこのAtg1がおそらくオートファジーとは独立に伝播に関わる機能を持っており、それによって凝集の細胞内取り込みが行われているところまで見出しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は樹立した伝播モデルを用い、Atg1を足がかりに、細胞内で形成されたフィブリルが細胞から放出され、異なる細胞に取り込まれる分子メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施
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