研究課題/領域番号 |
19K22593
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 正仁 金沢大学, 医学系, 教授 (80191336)
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研究分担者 |
坂井 健二 金沢大学, 附属病院, 助教 (00572306)
濱口 毅 金沢大学, 附属病院, 講師 (70452109)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 脳アミロイドアンギオパチー(CAA) / 脳神経外科手術 / アミロイドβタンパク質(Aβ) / Aβ排泄経路 / 全国調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳外科手術によって脳アミロイドアンギオパチー(CAA)が誘発されるかどうかを明らかにすることであり、研究計画は(1)脳アミロイドアンギオパチー(CAA)モデルを用いた実験的研究、(2)CAAに関する疫学的研究の2つからなる。令和元年度は以下の研究を行なった。 (1)CAAモデル動物による脳神経外科手術の影響に関する実験的研究(浜口、山田): 3ヶ月齢のR1.40 APP transgenicマウス(ホモ接合体)(R1.40マウス)の脳にPBS(リン酸緩衝液[pH7.4] 0.01M, KCl 0.0027M, NaCl 0.137M)を注入し12ヶ月後に評価した場合は、脳および脳血管へのAβ沈着を認めなかった。しかし、リン酸緩衝液にNaOHを加えた溶液(リン酸緩衝液[pH7.4] 0.01M, NaOH 0.006M)を30日間室温で放置したものを3ヶ月齢のR1.40マウスの脳に注入し、12ヶ月後に評価すると脳実質へのAβ沈着は認めなかったが脳血管にAβ沈着を認めた。 (2)CAA全国調査による脳神経外科手術等の影響に関する疫学的研究(坂井、山田):CAA関連脳出血の全国疫学調査の2次調査では、474例中11例(2.3%)が55歳未満に発症した症例であった。男性6例で女性5例。発症年齢の中央値は48歳(範囲37–54)。CAA関連脳出血に対するBoston criteriaにおける診断カテゴリーは1例がprobableで10例はpossibleであった。出血部位は前頭葉が6例で、頭頂葉と側頭葉がそれぞれ2例、側頭頭頂部が1例であった。CAAや脳血管障害の家族歴を有する症例はなかった。また、脳血管障害や頭部外傷を既往に持つ症例はなく、脳神経外科的な手術を受けた症例もなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAAモデル動物による脳神経外科手術の影響に関する実験的研究については、脳外科的な操作でCAAが起こる可能性があることを示すことができた。今後は、その原因がAβ排泄経路の障害に伴うものかどうかの確認を行う実験を行う予定である。 CAA全国調査による脳神経外科手術等の影響に関する疫学的研究については、若年者発症CAAの臨床的特徴を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は下記の計画を推進する。 (1)CAAモデル動物による脳神経外科手術の影響に関する実験的研究(浜口、山田):2カ月齢のR1.40マウスにAβ排泄経路を障害する手技を加える。具体的には、①自己血注入あるいは②フィブリン糊注入を行い、くも膜下腔及びVirchow-Robin腔において髄膜・血管・脳実質の間を癒着させ血管壁および血管周囲を線維化させることによって、血管に沿ったAβ排泄路を形態上も機能(vasomotion)上も阻害する。対照群として生食注入群をおく。通常であればCAAが出現しない14カ月齢(手技後1年)で介入群にCAAが出現するか、さらに20カ月齢(手技後1.5年)で介入群に有意に高度のCAA・CAA関連血管障害がみられるかを検討する。 (2)CAA全国調査による脳神経外科手術等の影響に関する疫学的研究(坂井、山田):CAA全国調査で明らかになったCAA関連脳出血の症例について、55歳以上で脳出血を発症した症例に範囲を拡大し、脳神経外科的な手術や頭部外傷とCAAとの関連について検討を行う。脳外科手術や頭部外傷の既往が判明した例については手術所見、画像所見、病理所見等に関する追加調査を行い、CAAとの関連を明らかにする。
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