研究課題/領域番号 |
19K22596
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大槻 勤 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特任教授 (50233193)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 医用放射性同位元素 / 線源内療法 / 加速器 / 研究用原子炉 / 分析技術 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、放射性核種のMo,Cu,Ge,Ce,Au等を用いて電子線や荷電粒子などの加速器による医療用放射性同位体の生成断面積を実験及びシミュレーション両面から検討を行いう。また、ウラン系列の放射性廃棄物として多量に存在 するラジウム-226(Ra-226)を用いて、前立腺がん等の核医学治療に有効なAc-225の製造の基礎検討を行う。さらに将来的に有用とされる様々な放射性同位体を用いたDDS(Drug Delivery System)を目指した放射性核種を伴ったRIナノコンテナ(C60,C70)などへの応用を探ることを目指している。まず、放射性核種Mo99,Cu-67,Ge-68,Au-194などの製造利用を検討している。電子線による医療用放射性同位体の製造を電子線加速器ばかりでなく原子炉まで拡張して生成断面積を確認する。新しい製造手法が開発されれば国内はもとり世界でもより安価に各医療施設に提供できる可能性がある。本研究では、これらの前段研究として電子線加速器を用いてMo-99やCu-67,Sc-47,Cu-67,Ga-68,Rh-105,Lu-177,Re-188他を製造する実践的な研究を行い、これらの結果はJRNC等の国際氏誌に受理されている。今後、アルファ線源内療法に用いるAc-225をRa-225の娘核種として容易に製造する手法の開発を試み、ナノコンテナなどの応用も含めて展望することを準備している。そこで本研究ではRa-226を電子線照射で発生する高エネルギーガンマ線をRa-226に照射し(光核反応を用いて)、線源内療法に有効なAc-225の製造及び反跳法によるフラーレンへの内包の可能性を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、以下の進捗であるが、新型コロナウィルスの影響やそれに伴う原子炉や加速器の運転停止等の影響で研究が順調に進まない状況が生じている。 本研究では、まず、安定同位体委のMo,Cu,Ge,Ce,Au等を用いて電子線等の加速器による医療用放射性同位体の生成断面積等を実験及びシミュレーション両面から検討を行った。現在、放射性Mo-99/Tc-99mやCu-67,Ge-68,Y-90,Ce-141等の放射性医薬品の種々の方法での国内で生産が議論されているが、我々もその有力な手法として高出力の電子線加速器や研究用原子炉利用を提案している。これらの前段研究の成果は電子線加速器を用いたMo-99やCu-67,Sc-47,Cu-67,Ga-68,Rh-105,Ce-141,Lu-177,Re-188などを製造するという有意義な結果が得られている。これらの結果はJRNC等に投稿し、受理された。また、TcやAuなどの核種が内包されたナノコンテナの製造も論文にした。さらに、これらの核種の生成断面積を、計算コードを用いたシミュレーションを実行し加速器システム全体の構築をはじめている。さらに、これらの手法を用いて、[Ra-226(γ,n)Ra-225→β改変→Ac-225]の製造を始めている。また、実際に制動放射線によるRa-226の生成断面積の基礎検討、照射エネルギーの最適化(2年 目)、Ra-226からAc-225の分離技術の検討と開発(イオン交換等)(3年目-4年目)の基礎検討を行っている。レーザー蒸発法によるフラーレン等の生成および元素内包化を利用した放射性核種DDS等への可能性の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
医療に有用な同位体であるMo,Cu,Ge,Ce,Au等を用いて電子線加速器や原子炉による放射性同位体の生成断面積等の検討を行う。Mo-99の製造実験では、これまで得られなかったデータを電子線のエネルギーを10MeV程度ごとに変えて収率試験を行い論文に纏めた。今後、収率の理論計算と実験的に得られた収率と比較検討を試みる。Ra-226に対する(γ,n)反応の実験結果は存在しないので、核データ的にも重要な情報となる。Ra-226/Ac-225の分離技術の検討と開発:購入したRa-226線源をパックし照射ターゲットとし、電子線のエネルギー30MeV程度で照射を行なっている。アクチノイド系で利用されているDGAレジンを用いた硝酸系イオン交換が適応できるという文献もあり、この手法を確認する。数度繰り返し、分離技術を習得し、できれば纏める。DDS等への応用の基礎検討:ゾフィーゴの生産ばかりでなくフラーレンナノコンテナのDDS等の基礎検討を行う。アルファ線放出核種はその反跳効果により娘核種はエネルギーを持つ。フラーレンやナノチューブに親核種Pb-212を溶かすだけで、内包化が起こることが報告されている。我々の研究でも同様の研究を行い医療用放射性核種Mo,Tc-99m@C60の生成の可能性を実験・理論の両面から研究を行ってきた。さらにレーザー蒸発法を用いてMo-99/Tc-99mやCu-67,Ce-141,Au-194,Ac-225内包C60やC70、ナノチューブ等のナノコンテナ可能性の知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた状況:コロナ禍における実験計画の遅れ、及び研究打ち合わせや情報収集などの出張の自粛等により、研究計画全体に支障をきたした。また、研究用原子炉の稼働機関の短縮や加速器のメンテナンス機関の延長にも影響を受けた。
使用計画:令和4年年度ではこの遅れを取り戻すべく、研究計画を再度構築し直す。具体的には令和3年度に製造したCe-141などの放射性同位体やその他の安定同位体を用いた医療用DDS(drug delivery system)の基礎研究のためにレーザー蒸発法を用いた内包フラーレンの製造の知見を得る。
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