遺伝子上の3塩基繰り返し配列の異常伸長が原因のトリプレットリピート病には、CAGリピートによるハンチントン病(HD)や脊髄小脳失調症、CTGリピートによる筋強直性ジストロフィーなどがあり、いずれもが根本的治療法のない進行性の難病である。これらの疾患では、異常伸長リピートから生じるmRNAや蛋白が障害を引き起こしており、負荷の原因となるリピート長が長いほど、重症となる傾向がある。またもう一つの特徴として、これら疾患の多くではリピート長が一定ではなく、年齢とともに伸長して症状の進行に寄与する。本研究では、こうした異常伸長リピートを短縮誘導して正常化するというこれまで試みられたことのない革新的アプローチで、トリプレットリピート病の根本的治療法開発を目指している。 今年度は、CAGリピートが形成するslipped DNAに結合する分子について、誘導体展開をおこない、より異常伸長リピート短縮作用が高い化合物を探索した。リピートヘアピン構造への結合性がin vitro検証系において確認された誘導体について、トリプレットリピート病疾患モデル細胞HT1080-850Rに4週間の投与を行い、small pool PCRおよびサザンブロット法にて異常伸長リピート短縮作用を検証した。また、今後の臨床応用を目指し、有望な誘導体について膜透過性の評価や、ヒト細胞モデルシステムを使用して血液脳関門透過性を評価した。
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